須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -104/113page
日の晴も秋は十方に暮にけり |
仙台 |
智 幽 |
仰きみる老木の柳散にけり |
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南 明 |
秋はものゝ殊に名の木の散ゆふへ |
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一 止 |
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遅 来 |
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悲しさは雁(かり)にもならぬ便かな |
遠州 |
嵐 牛 |
百に手のやかてとゝくをちる柳 |
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杜 水 |
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あすありとたのむの鴈(がん)の音に鳴て |
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資 昌 |
おこたりしみをくゆるけふかな |
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適莫(てきばく)有といへとも五十六年の交り |
一夕(せき)の夢となりぬ鳴呼(ああ)昔は其はし |
めを誘ひ今は其終りを歛(おさ)む流石(さすが)に |
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其交りを思うて只(ただ)机に寄て黙するのみ |
月を待こゝろもなくて秋の暮 |
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清 民 |
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観山居社徒 |
露とかけ残して入りぬ四日月 |
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春 斎 |
はせを葉やゝふれて寒き露の音 |
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壮 山 |
ゆく月の露のみ草に残りけり |
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文 起 |
入月のあとやつめたき神の露 |
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漸 風 |
花も実も過し終りや名の木散 |
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庚 華 |
しら露の玉と光りて消にけり |
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清 知 |
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晴霞(せいか)庵門人 |
木犀(もくせい)は風のあとほと匂ひけり |
仙台 |
河 玉 |
かれて飛尾花光るや西日かけ |
結城 |
得 来 |
遠くから来て鳴墓のわたり鳥 |
常陸 |
晴 山 |
いくとせの匂ひ残して菊かれし |
福良 |
敬 斎 |
ゆくかけの残り多さよ秋の雲 |
当所 |
春 路 |
次の間に鳴明しけりきりきりす |
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東 明 |
祖母の亡骸(なきがら)の前に親族みな |
通夜し侍(はべ)りて |
夜を虫の音もくり返す念仏(ねぶつ)かな |
孫 |
晴 山 |
身の秋や露と消にし人かなし |
曾孫(ひこ) |
旧 池 |
入る月のあとは夜寒のなみた哉(かな) |
曾孫(ひこ) |
せん女 |
むかし慈母寡(やもめ)と成給(たま)ひし懐に |
養はれて猶(なお)六十年の送光に |
恩愛を重ねし身の報ひ奉る |
こともなくてけふの別れとは成けらし |
かきりなく悲しき空や秋の月 |
男 |
桃 丘 |
慶応丙寅仲秋 |
斎書 |
印 |
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28 未明亡父追悼摺
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淋(さみ)しさや別るゝ跡の露しくれ |
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守女 |
誰も惜む蘭(らん)そ夕ヘのひとあらし |
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栗 人 |
萩(はぎ)の花や風といふもの世にありて |
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寛 夫 |
散る萩にふき添ふ風の匂い哉(かな) |
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朝 |
障子越しに仏の光る月夜哉 |
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保 秋 |
萩原や問ふ人も□き旅の空 |
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西 善 |
風流の散るはな連し夢の秋 |
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北 川 |
人毎に袖(そで)をぬらすや萩の露 |
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潭 柳 |
朝風に菊の白露(あふ)れけり |
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冬 鼠 |
ふんふんと香の匂ふや萩の庭 |
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昇 霍 |
文 音 |
秋のほたる高ふ飛夜のもの寂(さび)し |
会陽 |
志 誠 |
二つなき御法(みのり)の花の色見へた |
植にし種そ世々に栄る |
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曽 堅 |
茂るたけ繁(しげ)るといへと野分(のわき)なくは |
遊ふ類(たぐい)の秋もみましを |
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真似蘭 |
亡父の霊をなくさめんと諸ろ君の |
贈られし追句戴て拝読し予 |
も浮む涙とゝもに霊前にをいてめ |
もと染るにそ |
専と秋はものうきに又鹿(しか)の声 |
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未 明 |
拝吟 |
未の秋 |
奥 守山連 |
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