須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -105/113page

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29 飄一翁七霜忌追福句合摺

 飄一翁七霜忌追福句合
さゝなみに角くむ芦(あし)の光りかな   一 笑
人なれし文字西の鶴や別れ霜   兎 月
梅か香に金屏(きんびょう)さふき書院かな   一 開
しふい茶も名の通りけり坊か花   尺 雲
骨おしみするや田打のやとひ人   亜 蓼
花守か妻や月夜の小せんたく   永 堂
棋(ご)に一間からるゝ花の居なし哉(かな)   山 石
赤松の雫(しずく)にそたつすみれかな   三 子
生花のもくろみするや春の雨   雪 兆
うめ咲やたてこめてをく御成の間   草 居
遠矢射る人の見とれるひはりかな   文字 文字
客ふりに畑をほめる花見かな   尺 山
梅さくや山さとありく菓子おろし   至 中
三味線の稽古(けいこ)聞ゆる柳かな   眉 月
春深き藪(やぶ)となりけり落つはき   砂 文
脇寮の茶をへらさるゝ茶摘かな   文 来
地形するひゝきに落る椿かな   一 秀
約束の花見手を打日和也(なり) 奥野谷 鳥 梭
腹のたつ時は柳かくすりかな   松 風
湖の空のひくさはなく蛙(かわず)   花 香
はるの水わかゆく方へなかれけり   ふさ女
なの花や堤普請の人通り   青 雨
花の雨にあふり流れつ塩肴(さかな) 票 旦
余念なきさまに昏(くれ)けり夕柳 八 翠
なの花に井出の玉かは濁りけり 西 木
蝶々(ちょうちょう)の羽風のみかな草の上 凉 々
暮るのも惜からぬ花の月夜哉(かな) 竹 水
二月や涅槃参(ねはんまいり)を二日から 若宮 蘭 馨
風呂焚(たき)の団扇(うちわ)にはこふ椿(つばき)かな 太田 一 馬
霞(かす)む日や京てわすれし舟の醉 自 耕
雪をれの竹たてかゝる椿哉   仙 子
藪潜(やぶくぐ)る女の声やうめの花   甘 林
昼寢する狐(きつね)をおとす霞(かすみ)かな   淇 翠
法楽の芝居はしまるひかん哉(かな)   万 山
雨風のぬくもり見ゆる木芽かな   風 笑
継穂して雨もつ空を宵寢かな   三 省
山内の子供喧文字(けんか)や落椿(つばき)   萩 我
黄鳥(うぐいす)の来てしつまるや碁あらそひ 太田 十 中
手さくりのやみにも青き柳かな 方 居
世を横に住分別かはなのやと   鬼 年
花にふる雨くれなひにみゆる哉(かな) 玉造 蔵 六
月や雪と人にいはれてちる花か 栗崎 關 住
泊るには小一里はやし藤の花   唐 文字
初草や先からさきの松のかけ   茶 仁
陽炎(かげろう)や一鞍(くら)すみし馬の顔(かお)   布 玉
ひらふたる矢をもて帰る田打哉(かな)   美 丸
番祢宜(ねぎ)の退屈かほや藤のはな   橘 香
春かせや湖水の鮒(ふな)の田へあかる   梅 笠
蝶を見て工夫のつくや茄子代(なすびしろ)   南 化
普茶にゆく連をまたせて継穂哉(かな)   達 山
藍(あい)くさきなかれに殖る鳥芋(くわい)かな   雪 仁
家鴨(あひる)なく家や庭まてあしの角 松 沓
とんとにも一はたらきや海士(あま)かつま  判者 杜 年
 丁酉二月
 

30 新年摺

動くたひのひる心の柳かな   孤 山
立ならふ柳や月の玉すたれ   月 舟
吹こほす井戸こゝろよき柳哉(かな)   吐 月
舟ゆたりゆたり柳の綱手かな   月 窓
旭(ひ)をふくむ柳に風のなくもかむ   月 山
竈獅子(かまじし)のあきとに分る柳哉(かな)   蟻 道
青柳や腰のまからぬ鞠(まり)目付 千古庵  柏 翁
 丑とし

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