須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -053/100page
45 愛山自祝摺 |
井筒にも花さく年のあしたかな |
一具 |
市中や明行空を年の花 |
山 |
波をすく間のしはらくや初日出 |
西馬 |
日に向ふわら家の鶴も今年かな |
松什 |
浦々の殊勝みへけり着そ始め |
伯遠 |
飛々にあるそ野梅は面白し |
渕子 |
山かけにひまとる月や梅かほる |
萬古 |
ころあひの枝は届かぬ野梅かな |
夷則 |
川添やまたしら梅のつほみかち |
鶯所 |
ひと宵吹かむるや梅を折はつみ |
遅流 |
笹ならす風にもりんとうめの花 |
梅室 |
吹ちるは椎の朽葉やうめ林 |
木容 |
わら苔や梅か出よとは露しらす |
黙池 |
入こみにならぬ木ふりや遠柳 |
芹舎 |
折あとも風に埋あふ柳かな |
飄齋 |
屋根にすれ戸にすれ青む柳かな |
淡節 |
膳立の上や柳の取わたし |
梅通 |
寝て聞や柳すり行傘の音 |
其山 |
うくひすや築地のうらも山畠 |
素屋 |
鶯や目をほつちりと声のあと |
左 |
うくひすの来る枝のひぬ隣から |
林曹 |
山ひとつ向ふを行や花の雲 |
松隣 |
嵯峨人や栄耀に花の京歩行 |
稻處 |
花さくや木もと木もとに立めくり |
黄山 |
細いほと花にしたしや水の音 |
而后 |
竹林のわすれてあるや花の陰 |
我竟 |
ちる花のひやひや来るや闇の奥 |
宿知 |
押水に岸朧(おぼろ)なり夜の花 |
梅裡 |
雲かけて花にうすうす朝日かな |
静嘉 |
晴天に見出して白し花の月 |
鵬居 |
木を替て盛り久しき桜かな |
丈翠 |
見る最中(さなか)人は帰るや夕さくら |
冬岐 |
風呂敷て魚板つつむさくらかな |
太乙 |
遅さくらちる静さを得たりけり |
悠々 |
鳴はれは背の雨乾く蛙(かわず)かな |
魚楽 |
靄(もや)はれてあはたたしさよ雉(きじ)の声 |
雅琴 |
畑持て雉子(きじ)も遊はす関屋かな |
欽哉 |
雉の尾に重みのかかる余寒かな |
烏谷 |
鳥の巣やくらい処に水の音 |
義香 |
明かりもつ田もとひとひや春の月 |
一馬 |
我人の間になりぬはるの月 |
五引 |
山吹や千鳥舞込花のゆれ |
未足 |
かけこほしほし蝶行川原哉(かな) |
春室 |
草ひとつ生ぬ洲先や舞ふ小蝶 |
茶山 |
鳥雲に入やみつめて上る坂 |
西疇 |
川へりやそたちやすさに桃の花 |
乙良 |
河風もはひる座敷や桃の花 |
鷺眠 |
灯ともして思へは長き日なりけり |
御風 |
月はとく見へて日永し不しの山 |
二葉 |
市中や鯛提て行春の雪 |
山 |
おくれてもさのみはなれす春の雁 |
ニ丘 |
岸まてもよらぬ小波や蛤とり |
一止 |
少しつつ吹にもぬるむ野川かな |
尊阿 |
意地のない曲りやうなり春の水 |
大費 |
ちよほりと乾た砂や春の水 |
兒川 |
若草のわかしさはりや船上り |
英泉 |
春の夜やとこへ行にも連のある |
鳳毛 |
春の夜や焚火したれは月のもる |
禾月 |
鐘つきの麁相(そそう)か暮す春の雨 |
多よ女 |
□□□□□□□□□□□□ |
春齋 |
□□□□□□□□□□□□ |
唐華 |
□□□□□□□□□□□□ |
斗凉 |
時めかす朝や雑煮の包箸 |
一乕 |
歯かためや匂ひ床しき吉野椀(よしのわん) |
雨石 |
戸をさせはこもる匂ひや七五三餝(しめかざり) |
國 |
凍(いて)とけや垣のはつれのさし柳 |
苔峨 |
春風の山も時得し姿かな |
清甫 |
春かせや掃出す花のはさみ屑(くず) |
静夫 |
愛山之友壯山之悌祝言 |
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終身勿怠易日鳴謙貞吉 |
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立並ふ兄よ弟よ福寿草 |
清民 |
このかみの五々の賀に |
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末広になる杯や屠蘇(とそ)のあと |
壯山 |
自祝 |
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