須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -054/100page

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試る筆のちからや墨の色 愛山
   嘉永二年巳酉春 世笑生書 印
   

46 年内立春 (1)

 
    年内立春  
せはしさに立紛れなし冬の春 白亥
 畳にあまる餅花のかけ 西馬
広蓋(ひろふた)にかさる産着を透見して 桃人
 はれた咄(はな)しも声をひそむる ミき越
白々と四手のひらつく穂屋の月
 こほれこほるゝ露の賑ひ
翌日をまつ片相手なり除夜の梅 臼布
行と来る年の間にたつ身かな ミき越
ひとむかし過たこゝちや□□□ 桃人
   
   

46 年内立春 (2)

ちとの間を我空にして初鴉(はつがらす) 西馬
光りあらはにみゆる日の春 桃人
庭掃除梅の莟(つぼみ)もこほすらん ミき越
紙に粲(いい)を分ていたゝく 白亥
憂事を覚えてかさす袖袂(そでたもと)
根岸をもとるうす暮の月
大海も御降(おさがり)すみし光りかな 白亥
花のさた咄しなからやえ方道 乙年女
二度逢は人にも去年(こぞ)とことし哉 桃人
   

46 年内立春 (3)

海苔(のり)にはや春のあふるゝ色香哉 ミき越
あたゝかにたつ膝(ひざ)の日埃(ひぼこ)り 白亥
猿引の隙(ひま)を費す関の戸に 西馬
伊豆て貰ひし扇みせ行 桃人
水飯の施し仕舞夕月夜
まちこかれたる雨のはらつく
八重よりもふかくはならぬ霞(かすみ)かな 西馬
久方や黄鳥(うぐいす)の音も明わたる 臼布
色もまた薄けしき也花すみれ 乙年女
身ふるして新しくみる柳哉 桃人
 戌午春                鴎波書 文字 
 

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