須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -055/100page

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47 歳旦三物俳諧摺

   
    歳 旦    
寝る丈はねて目の覚て御代の春   壮山
 枝もならさす吹きわたる東風(こち)   士國
もゝ千鳥囀(さえず)るのみて隙もなし   漸風
    春 興    
月かけも水も流れて梅の花   士國
 葉よりは長う伸し芹の根   漸風
出代りの手透に灸(きゅう)もすゆるらん   壮山
    歳 暮    
後去りもならす成けり大晦日   漸風
 冬をはなるゝ門の足音   士國
いさみ立駒にかさりの鞍置て   壮山
     
ともともに身をいれて鳴蛙かな   漸風
行もとりうしろ吹るゝ柳哉   士國
手紙にもはや書かぬる余寒かな   壮山
    辛未春         苔堂書 印 印  
     

48 東郊追悼摺

   
陽炎(かげろふ)や戸くちにたてし荷ひ棒   芹舎
見てもよき旅よそほひやはつあはせ   淡節
入相のかね長たらし花の里   潮水
水鳥もまた寝ぬおとや春の月   素屋
片空はあられ月夜やうめの花 古人 見外
囀(さえずり)やうはさとなりしけさの雪   等栽
わらんちのまゝや新茶の客になる   宇山
薬玉(くすだま)に淋しううつる火(ほ)かけ哉   沙山
聞てのちうしろ見られて閑古鳥   精知
見てくらす人の世にさく桜かな   きく雄
掃てまた苔にもとすやかたつふり   春湖
露やおく夏枯草を見るにつけ   文字
ゆれなから咲たやうすやゆりの花 仙台 彫栄
松ひと木こゝそとつかふ扇かな   春水
只ひとりのこりてさひしすゝみ台   冨ニ
夕たちや見かけて遠き渡し小家 会津 池水
夕たちのはれ間をとふや鷺(さぎ)一羽   止風
今ふいたあやめを伝ふ雫(しずく)哉   悠巨
行々子なくや灯とほすとまり舟   室挙
笠とりにもとる人あるあつさかな   和翠
月の出て川へわたすやすゝみ台   四雲
鳴はかり何の能なし行々子   朶年
若竹や日に日にかはる風のおと 福島 山石
よこにふる雨を背おふて田植かな   泰甫
船の火のほつかり見えて風かをる   為心
ひと声はたしなきものそほとゝきす   秋瓢
暮る間のはれやほたるの草はなれ   剪雪
うつくしう雨のふるなり蓮の花   貴桃
明やすき夜の夢をしくおもひけり 三春 睦蝶
辞儀もせぬうちに言出すあつさ哉   馬山
露の身や露をはなれてとふ蛍   桃渓
かけそひてさそひ出しけり江の蛍   花霰
茂りあふ木をかたとりてすゝみ台   柳城
戦(そよ)く木のみなおちついて雲のみね   錦雪
杜若(かきつばた)傘さしかけてきる日かな   花好
明る戸や青田へはしる焚火かけ   一水
あとに見る花数うれし初茄子(はつなすび)   松橘
草々をさし出てさくやゆりの花   氷雪
そよくたひのひる風情や青すゝき   柳壷
立きはにまたのみ直す清水哉 郡山 一真
手をそへて見ても牡丹のちる日哉   花明
岸による汐なとふんて夕すゝみ   古夕
夕すゝみ月をのこして帰りけり   宗英
炎天やまとめてほしき松の声   樫静
白蓮に古ひた杭のかくれけり   花友
あるきよく砂はしめりて夏の月   白掌
ついて居て掃せる庭のほたにかな   文字
とりわけて客になる日の暑かな   少女

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