須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -056/100page

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暑き日のくもりや夜の人通り   稲露
こゝろまてさつはりしたる袷(あわせ)かな   梅香
ひるかほや垣根のそとはほそ流   石湖
ほしいのはきるにあふなし杜若   坎静
卯の花に入かけ寒し三日の月 二本松 菊露
早うから明けり百合は草のなか   夏暁
啼(なき)合すうくひすも居てほとゝきす   夢来
みしか夜や風に追はるゝ雲のあし   陽谷
紫陽花(あじさい)や水にうつせは水のいろ   文水
竹植てすくにすゝしき料理かな 小浜 柳依
あたらしき道のつきけり藪(やぶ)しみす   栄花
とふやうに見へぬ雨夜のほたるかな   柳翠
暮きつて見れは青田の明りかな   閑甫
休むへき所とてなし蝉の声   幽夢
みしか夜や明てものこる酒のえひ   雅通
すゝしけにこゝろうつすや夏の月   星圓
跡しさりしては見直すのほりかな   春羽
着かへれと袖にあつさのもとりけり   竹夫
早乙女の顔はその日のよこれかな   児川
    東郊居士遺吟    
朝晴に流るゝ雲や花の上    
 卯の花や月いる跡の風明り    
手に提(さげ)し笠やふはふは秋の風    
 星ひかる芦間に鳥の浮寝かな    
風そふて木かけなかるゝ清水かな 田村 東藤
とこまてもつゝくやうなり田植うた   子弓
ふる音を松にむすふや五月雨(さつきあめ)   うめ女
若葉から声に隈なし時鳥(ほとゝぎす)   竹澄
雨はれてしつかな朝やころもかえ 安積 扇花
二三枚うえてやすむや初田うえ   梅枝
高い木に月はかくれてほとゝきす   菊香
飛ちかふ垣のうへなるほたるかな   一二
よい風のひとおしに来る青田かな   掬露
片そねをつゝむくもりや葛(くず)のはな   松亭
不手際もかなりすゝしき渋うちは   掬月
すみきつて月のやとりし清水かな   文字
水うては風のうまるゝ庭木かな   文字
さまさまのはなしふえるや夕すゝみ   梅盛
月さして猶さらすゝし軒の竹   積守
夏きくのちりてものこるかをり哉   梅林
人の来てともに長居やたかむしろ   如観
風すこしありてにきはふのほり哉   一界
あやめさす手もとに風の匂ひかな   界孫
舟棹(さお)のしつくかつゆかとふほたる   梅胤
蝉なくや当分やすむ水くるま   梅州
ちらと見てそのゝちくらき蛍かな   旧尋
うち水のあとや乙鳥(つばめ)のはこひつち   珠山
葉さくらのかけやまことの水の色   津未女
あいさつのすんてたかひに扇かな   松絲
雨乞ひやぬれし羽をりのぬき心   幻士
きくたひに見る気になるや時鳥   壽南
    はし書略す    
過し日をおもひかへすや夜の暑さ   春眠
花の香やその俤(おもかげ)を風かをる   如丸
かけみねと声はのこりて杜宇(ほとゝぎす)   椿二
蓮の香や過ぎし月日のおもはるゝ   里水
そのときも啼てこよひも杜宇   西美
おもひ出すあつさや今年七めくり   菊也
手向たる花もしほるゝあつさかな   金谷
筆跡に心よりけり土用ほし   調齋
夏(げ)こもりやわすれぬ事の眼にうかふ   白風
呼もせぬ文字の鳴ゆく忌日かな   隈水
ぬれやすき袖や殊さら入梅(つゆ)くもり   淡湖
物たらすおもふ朝なや露すゝし   薫風
 一儀ぬしは兄東郊居士の俳諧に遊ひし    
 心をうけつき商道はいふもさらなり    
 兄弟ともしたしくこたひ七回忌の    
 追福をいとなむとて四方の諸風子の    
 佳句を乞ひ法莚を開きて弔ともに    
 又旧交のしたしみをかさねるものなり    

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