須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -057/100page

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兄弟の声よく似るや夕すゝみ   疎吟
立やすしはや七年も夏の夢 従弟 軽舟
日盛りや草もしほれて眠るさま 実矩
おもふ日のあつさしのくや俄雨(にわかあめ) 義宗
雪の峰この世に遠き西のそら 義明
  東郊居士の七回忌を営て    
のこりなく備へしものや夏氷   一儀
    明治六年六月    
     

49 新年摺

   
ひと声に驚いてこそ初からす   雪主
よへは雪今朝は初日そ窓明り   為山
万歳や顔も其まゝむかし振   菊雄
初売や神の燈影(ほかげ)の人に添ふ   東松
斧はまた入れぬ山よりはつ霞   花朝女
先おもふ海山ゆかし初烏(はつからす)   等栽
袴(はかま)はく今朝の寒さに福寿草   舒堂
暮速うなるこゝちして羽子の音   静雄
新年とおもふはかりの日和なり   其悠
鋤鍬(すきくわ)に愛たかりけり注連飾(しめかざり)   通義
其奥に去年はかくれて初霞   柏葉
日のにほひ窓のみとりや年の華   完鴎
市物と見し穂俵や飾り栄え   凉坪
太箸(ふとばし)やおのつからなる持こゝろ   翠兄
屠蘇の香や袴なからの給仕人   釣月
新年の風に吹れて神路山   雲外
はつ空を見なから遣ふ手水哉   雨城
初子の日遊ふに飽かぬ人こゝろ   文字
青柴に木の実もませて門飾   蘆水
早梅や常ははたけのひとつ家   文字
若水や釣瓶(つるべ)は振て見たい味   恭道
打音のきかねと今朝は薺粥(なずながゆ)   是三
殊更に待乳(まつち)輝く初日かな   乳山
一月や扱ひ軽き神折敷(おしき)   晩香
気の付や初日のあとの薄くもり   五菖
袖振ふ雪や若菜も摘てから   鶯笠
年立やきのふ打たる柳釘   華兄
息才はねかひ通りや日の初め   正价
着衣始(きそはじめ)すましてからや外明り   春阿
井ひらきや灯火つけて闇(くら)いうち   黙平
世の静うけてとし立庵かな   春湖
   丙子新年   無別書 印    
     

50 春俳諧摺

   
ひと筋に柳見あける門出かな   西美
 ともにうかるゝ春の雁鴨   木甫
海士(あま)か家のさすか長閑(のどか)に住なして   春湖
 鼾(いびき)かくほと寝てもねたらぬ   雪江
大空に月をのこして明かゝり   素石
 ちらほら花にうつる藍(あい)畑   五休
綿くりを言たてに来て入かはり   冨水
 座配りするもたすき前かけ   沙山
小屏風(こびょうぶ)はへたてに足らぬさし向ひ   鶯笠
 只ひとくちの又のやくそく   はしめ
降かゝる雪にふつふと馬の息   永機
 月はない筈星崎のふゆ   完鴎
海神へ備へる神酒(みき)を清らかに   素水
 ふるきはしらのひかる台所   精知
我儘(わがまま)にあれと性根のよい男  
 筆の著用(ちゃくよう)はほしきものなり  
花を見てもとる旅着に初袷  
 夏の小雨のはれてうらゝか  
   東京客中    
花早し出れはおとるく事はかり   西美

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