須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -058/100page

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 明治十二卯三月    柳隣書 印    
     

51 新年摺

   
我かちになかぬさためか初からす   芹舎
あら玉のこゝろのとけきあした哉   拾山
わか水を汲間しつかな早瀬かな   稲處
竹縁の日なたそたちや福寿草   百可
はやけれとことしのものよ梅柳 浪花 潮水
鶯の愛相もしたきはつ音かな   朝逸
誰も彼も無事かさかなよ屠蘇の式 神戸 卓志
まきれすに往手の杜(もり)やはるの雪 淡路 周策
うくひすにゆたん見せけり庵の朝   晩香
万歳やとしのころよき薄白髪 日向 文字
鶴飼うて見たくなりけり松のうち 土佐 五菖
あたらしう雪降そへることし哉 長門 得齋
火せゝりもさすかにうとし三ヶ日 天草 蜊石
にこりなきとしのひかりや水の色 石見 静雄
鴨も身をきよめてういてはつ明り 伯耆 鶴楼
浪おとや一りんしろき梅の花 讃岐 真海
鳥のなく里のはつれやうめ柳   真水
はつからす洲さきは闇をはなれ鳧(けり) 伊勢 蔵中
早誰か来しそ若菜をつみしあと   果樵
鳥かけの冴(さえ)るはさへて野のかすみ 尾張 はしめ
蔵ひらき船の手代も来たりけり   静處
噂(うわさ)するうちにうち出す薺(なずな)かな   荷庵
おこたらぬ日あしにならふ柳哉   素陽
ふくわらのふまれて清し雪雫   祖康
梅か香の吹たらまるや笠のうち   三楓
野へ出れはつれはありけり若菜摘   秋湖
うくひすもよんて見せたし初こよみ 三河 蓬宇
是もまたわか家にふるし雑煮椀   石芝
しつかさかとしの花なり山かつら 遠江 藹村
松竹もけさはとおもふはつ日かな   葱畝
蝶あそへ我もかりたき芝のうへ   舞巾
梅見るや凍てのぬかりの岨(そば)つたひ   十湖
うくひすやはつ音にかゝる力あし 駿河 蛭堂
炉によれは稲つむこゝろおほへけり   斗大
おりかけし機(はた)やむしろや桃の花   成叟
若水や折を笑みたる冬至梅   乙彦
立かへるとしのきほひやまつの風 相模 壽道
寒さにも朝寝きらひや松のうち   雪蕉
御降(おさがり)や眠気さすころ茶のにほひ   篤雅
年礼やまつ師の前をいひはしめ   枕渓
縁さきやそれし手鞠(てまり)を猫の追ふ   耽楽
神の灯の膳にかけさす雑煮哉   秋山
寒いのてみなそこそこの礼者かな 甲斐 香芸
一月もはやふ間にあふ薺かな   雷石
家ことにかゝやくものやかゝみもち   左岳
日のかけの野にひろかりぬ初雲雀(はつひばり)   半拙
ひく人に齢ゆつるか野の小松   竹良
たつとしのきほひや梅も室放れ   草國
きぬきぬの沙汰はものかは初からす 信濃 其殘
いなゝくやはつ荷おろした門の馬   省我
破魔弓やとし徳棚をうしろたて   文字
門松やつねにもほしき風のおと   凌冬
汐(しお)さきのはれはれしさよはつ日の出   竹斐
若水やくみあける手も星あかり   司松
身にあつき親のめくみや節(せち)小袖   一壽
万歳のわらひに嵩(かさ)むふくろかな   琴声
ひからせておく鍬鎌やとしの花   文字
うくひすやけさは氷らぬ筆のさき   梅凪
雨となる夕空ひくしいかのほり   素仙
夜も雪解(ゆきげ)するよ茶臼のひきこゝろ   楽二
いそかしきうちにとしたつ農家哉 越後 春暁
井ひらきやのそけはふかき去年の闇   旭扇
寝て聞たからす見にけり初手水   硯宇
薮とのみ見て居し中に梅の花   瓢徳
わたるにもうれし恵方へむかふ橋   茶遊
島畑のそらもあまさす啼ひはり   晴雲
若水やしはし手桶のおきところ 越中 西蘭
玉と見る松のしつくや初日かけ   布尺
寝しつめは琴も鳴すか嫁か君   素笛
一日やわかうなりたる起こゝろ   守月

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