須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -059/100page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

陽炎(かげろふ)にとひそこねたり杭(くい)の鳥   露角
輪かさりのゆかしや船のみよしにも   香蝶
野も山も雪のまゝなりはつかすみ   松月
としわかし梅も柳もゆきの花   其諺
わら垣もとらぬ磯家やはるの月 能登 守朴
降かちの野山もはれて小松ひき 佐渡 斧刪
うつくしき名はのこしたしねはん像 石狩 洞龍
里の子に顔見しられす傀儡師(かいらいし) 余市 應井
その中に青菜香はしる雑煮かな 小樽 和光
初そらやわらふに似たる雪の山   素更
宵月や呼樋(よびどい)の水のぬるむおと 江差 文字
川そへやうら戸うら戸のうめの花 函館 文字
はつ鶏にこと葉かけたき寝覚哉 羽後 吟風
畑中にはなれて梅と小家哉   御水
うれしさの一寸(ちょっと)日の出るかすみかな   素山
御降のおとしつかなり桧皮葺(ひわだぶき) 仙台 甫山
寒くともはるは春なりうめ柳 石城 桃壷
おかまれもするよはつ日の江の柳   見二
抱た子のはや手放れてきそはしめ 岩代 繻ワ
はつ鶏やあらたまりたる声のつや   忍山
とちらへもむかうていそけ初からす   太甫
うくひすは雨にもおなしきけん哉   帰童
ひき井戸のこほるゝ音や春の月   菊露
うくひすにいとまの出たり庭つくり   袋蜘
汲たてに朝かけうけて初手水 常陸 此義
万歳のまふやかさりのうこくほと   笠友
水ひきのむすひの長し飾海老   逸碩
乗初のほこりは知らぬ木馬かな 上毛 為流
こからしの鳴した木々や初かすみ   峨琴
老の手のあはせこゝちや初日の出 下毛 茂精
わきひらも見す出て雪の小松かな   此山
初そらやうまるゝやうに峰の松 上総 帰雲
にくらしき折もありしに初からす   貫文
家はみなまるきたのしや庭かまと   貞雄
陽炎(かげろふ)や灰屋の庭のしろきより   窗村
初空といふ間の雲や星ひとつ 下総 雨丈
若水や誰もにこさぬくみかけん   稲雀
鞠(まり)つくやかるうあつかふ袖たもと   静海
初空になりきる窓の明りかな   竹香
陸軍の出そめたくまし沓(くつ)の音   柳花堂
見心の花にも似たりはつこよみ   静遊
雪ふむも気合なのや小松引   里游
ひとゝせのあるしふりなりとし男   閑水
喰つみや這(はい)ならふ子を呼しをり 其峰
立のほる陽気や雑煮を盛手元   芦水
陽炎や笹にしつくの置あまり   梅后
海見ゆるところ迄来てはつ日かな   幽外
明ほのや民のこゝろに四方拝   左助坊
輪かさりや去年よりふへる蔵の数   夢外
梅を見る窓を真向の恵方かな   清峰
玉川をさして子(ね)の日の遊ひ哉   文字
庭掃てあかれはすくにことし哉   林華
海苔(のり)の香やたそかれ近き汐曇 武蔵 文字
霜白しのほるはつ日を拝む庭   不二丸
いねつむや机の下は去年(こぞ)の塵(ちり)   竹賀
曠(ひろ)やかな声やひやうしや謡そめ   薫女
窓明て見越しの松や初かすみ   梅賀
神の木に夜はまた□□□初からす   畦文
言おきに戸くちつたひの御慶哉   英磯
初ものゝそのはつ花やふく寿草   東桂
一の字のいち字をかゝん筆はしめ   一圭
逃水のあとになかれてはるの水   文友
つきそめる手まりや唄も一つより   角丈
門松やくゝらぬさきにひとなかめ   裡丈
初ゆめやわかきこゝろをありのまゝ   清嗣
その人におもむきのあり門柳   一水
掃そめや水引ましる焚ほこり   一理文字
うくひすや庭には去年の敷松葉   鶴國
かけうつる水にも梅のにほひかな   空狂
見わたすや先起ぬけに初御空(はつみそら)   好月
はふやうにはつ日わたるや松の上   素石
初蝶やけふを日からの鳥居先   金蘭
心先くつろきにけり初かすみ   露垂
近過て夜あけの幽(くら)し窓の梅   竹舎
毬(まり)打やいつの世よりのかさりもの   卜早

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は須賀川市立博物館に帰属します。
須賀川市立博物館の許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。