須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -060/100page
来たかけのうれし鶯鳴すとも 金羅 柳にもうつりのいろやきそはしめ 弔雲 ちょろちょろと水も野に出て初子の日 月杵 遊ふにも道はあるなり初子の日 月彦 葉大根やこれもとし立拍子もの 桂花 おなし日のなき心地せり三ヶ日 幹雄 きのふまて追はれし鳥や初からす 鶯笠 うくひすやほめねはならぬこの初音 凉坪 はつ年の窓やさし込日のひかり 富水 ちょろちょろと雪に萌出て春の草 黙平 斯(かく)てまた翌日をおもふや松の内 花朝女 明ぬうちまたれし声そ初からす 大鳩 下草にみとりをこほす柳かな 文礼 弾そめやみなうちとけし顔はかり 松雄 人声に夜のしらみ行はつ荷哉 松塢 鶯の明ほのおきの伏屋かな 三千守 のひのひと膝にかけおく柳かな 暁甫 田つくりや祝ひの数のはしさかな 覺齋 みれんなく喰(く)らうて気に入雑煮哉 太年 夜にかゝる客もまたなし三ヶ日 完岱 ふと箸はいたゝくものゝはしめかな 竹夫 ひとりつゝ着せて出す子や羽子手鞠 良大 梅か香や千町にあまる軒つゝき 延昌 行さきは我にも知れすうめ柳 昇鳳 浮鳥にねふるくせあり水ぬるむ 濤泉 蜑(あま)といふ名にはもとらす出代女(でがはりめ) 桂裡 福ひきや寝た子の耳をほめらるゝ 葉山 下枝にほし葉はやせてうめの花 東岡 何気なく気かるく起て初手水 蕉露 かりそめに屏風も置て庭かまと 成雅 あそふには里のことなり若葉摘 菊雄 人の手に千代はわたさし小松曳 尋香 門松や昼ある月は寒からす 永機 としの花あいかはらぬをけしきかな 等栽 たそかれはきのふにも似よ初日の出 素水 きれ凧(たこ)や淡路に似たる上総山 梅年 入来るもことしの人や朝の門 呉仙 野を過て里のまはりやいかのほり 宇山 みとりよりひかり先のるやなき哉 春湖 余念なく待て聞とき初からす 花楽 梅しろし門はゆきゝのおほろかけ 半山 のそかるゝ蜑か小家やはるの風 素香 とし玉や懇意すきてのおくれかち 夫明 はる風や山の袖からすこしつゝ 一精 年玉やことしもおなし品なから 壽存 出てつんて来るを祝義の若菜哉 草山 降つもる雪のしたよりはつ若菜 ふさ女 なまくさき箸とりかえて白魚哉 竹秀 数の子やいはふたあとも歯のひやうし 笑宇 左義長や橙のこす曲突のもと 扶山 敷た夜のこゝろのとけしたから船 其流 とし立て猶白妙(しろたえ)の外山かな 精知 明治十五午の初とし 不酔書