須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -061/100page

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52 竹樹追悼摺

   
  無常観想    
黄昏(たそが)るゝ旅や四五丁梅明り   竹樹居士
眼に立や雪間につみし海苔(のり)の色   雪主
初花やあたりに見えぬさくらの木   詢蓑(ママ)齋
七草や手向の数にひとまとめ   永機
香をしたふ道のしをりやこほれ梅   精知
淡雪に仰山らしき焚火かな   永年
花は七日人七とせの忌日かな   梅年
香か清き梅をこころの手向かな   玉成
雨も春雪も春なりうめの花   青宜
ふりつゝく小雨や春を惜むほと   採花女
うるはしきふところ見なる柳かな 柏葉更 超室
さゆるのもけしきほと也梅の花   凉坪
佐保姫や見ぬ佐保山の眼にうかふ   等栽
 各詞書あり略す    
七とせの春や磐城の竹の秋   旭齋
墨の香をしたふか蝶も机先   袋蜘
杯とゝもにゆつるや花むしろ   甫山
黄鳥(うぐひす)も終日のかす法の庭   帰童
梅しろし七とせ前をしのふ日に   文字
言の葉の便りも寒し別れ霜   素山
魁(さきかげ)の健気(けなげ)や梅に立日数   旭酌
巣こほれの鼠這(はえ)散る余寒かな   壮山
明る夜の海よりはやし山さくら 東京 秀九
うくひすや初手ひと朝は来たはかり   木兎
桃さくや干鰯(ほしか)をこなす杵(きね)の音   芦風
精進の鱠(なます)に散るや夜の花   戀奴
夜の明て朧(おぼろ)はなれし柳かな   新葉
花の香や木の間をすける菊造り   桃村
花鳥もよそよそしさや竹の秋   薫  
かたよりて春また寒し池の鳥   花水
田を前にぬくき小村やもゝの花   芳野
草餅やもてなしふりの山折敷(おしき)   吾妻
うつすりと紅はく空やはつ日の出   霜山
寒さをもいとふ色なし富貴(ふき)のたう   延信
潮の引なりに広かるかすみかな   洞霜
行春や山へ帰るは山の鳥   帳遂
我家の春は夜にあり梅に月   青山
鍵番の袴つけゝり蔵ひらき   八十八
居馴染(いなじみ)た田をよそよそし帰る雁   亀遊
ぬるゝとはよき気先なり水祝   猿舞
東風(こち)ふくや干潟にのこる汐の泡   丹前
箸紙にふたつさしけり小殿原(ことのばら)   文字
野に山に春は満たり百千鳥(もゝちどり)   直齋
鶯の遠音締るや夕間くれ   白鼠
筆置て盃とるや花むしろ   菊子
花と雲二手に別るいふへかな   柏の本
淀(よど)む瀬やのとか尽してうく文字(かもめ)   松蔭
湖にさへ浅瀬はありて蜆(しじみ)とり   千尋
鶴もまたしらぬ雪間の若菜かな   一山
綱引や勝ほこりたるちからあし   雛鶴
菜の花や近くて遠き道祖神   あや女
祝ひほと摘て買足す若菜かな   朝間
佐保姫や野は寒からぬ雨のあと   告志
散るはみな水のうへなり松の花   妓裙
野の風のやはらきて咲すみれかな   南花
水はなれした声てなし初蛙   看雲
ゆく春や松にさはらぬ海の音   千葉
梅か香を摺込日ありとろゝしる   松翠
神寂(さび)た石坂長し松のはな   十四女
水垢(みずあか)にすへる岩根や藤の花   清齋
鶯や茶の木かくれに家ひとつ   竹秀
売あまるほとは荷(にな)はす若菜売   新月
此雨にこの夕暮や花明り   竹世
近くともうらからは来ぬ御慶かな   松楼
また寒き春なれと此月と梅   花川
黄鳥の初音氷をはしりけり 武蔵 柳湖
島人に生海苔もらふ日和かな   琴松
風にそれ日にそれ揚る雲雀哉   静霞
陽炎にむかうてこほすなみたかな 甲斐 文字
散て後人に訪るゝさくらかな   菊壽
菜の花やからまる蝶をよけて飛   風音
したはしや奥ある花の散しかと 常陸 賞湖

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