須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -062/100page

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朝空や蜂は巣よりも高う飛   杉雨
しら梅や月なき夜にもたゝならす   鰐川
のとかさや門は春めく人通り   鳳梧
黄鳥のおくせす鳴や此広野 下総 魯周
夜もはやう明るやう也花七日   郷當
くつろけは膝また寒し朧月   汎翠
よちのほる山の深みや呼子鳥   佳大
流れ出て水になる温泉や駒鳥の声   逸窓
蓬莱にわらふもものゝはしめ哉   真路
山はたゝむつくり高しおほろ月   千成
あけほのは花の外なし向島 羽後 月静
鶯や初音からして啼上手   弄山
軒並や夏侍さまの掛すたれ   什美
山の雪毎日とけて流れけり   守誠
白過て明ほの寒き野梅かな   栞風
佐保姫に問たき鶴の行衛かな   知耕
はつ東風や明ほのさりぬ木の間より   試泉
うらゝかや手のひらほとに帆のみゆる 越後 旭向
桜にはまた朝冴の山路かな   蕉影
梅に来た小袖は重し初桜 岩代 晋泉
小一町家こみはなれて花の君   文字
年経ても名は埋もれす塚の梅   文拙
浦風や松葉に交るこほれ梅   いの女
うくひすやまた雪なから此はつ音   耕夫
ためらうて高揚もせすはつ雲雀   序風
着ふくれて見くるしからす御忌小袖   逸年
白雲の峰に棚ひくやよひかな   秋月
ふり袖をうしろ結ひや汐干狩   稲所
梅さくやきのふは舟路けふは歩行   花明
たね蒔や水に暮こむ日和雲   仙鳥
もゝさくやすこし小高き河原畑   窓六
文字(たき)てしされは霞む仏間かな   由道
手向にもなれとて花の供養かな   可求
薬ほとあるや接木に宵の雨   青山
若草や訪よくなりしはなれ家   菊守
梅か香に呼出されけり炬燵から   夢来
仏へもそなへて見たし桜鯛   梅圃
さひしさのそよきはなるゝ柳かな   文字
えりわけて見れはすくなし飾炭   梅居
山々も暮かねて居るやよひかな   月江
雪仏光りのこして解にけり   纒゙
鳥雲に入て声のみ残りけり   知有
くりかへす言葉を花の名残かな   桃雨
春寒し墓にゆく間の袴こし   鳳儀
一面に風なき空のかすみかな   東晴
よきほとに市をはなれて梅の花   平居
枡遣ふおとも揚気や蜆売   文字
うるはしう木の間出たり春の月   清流
枯草のまた萌ぬ間やふきのたう   宗穂
啼あとのさひしうなるや夕雉子(きぎす)   旭柳
養父入(やぶいり)の日は暮易うおもひけり   静香
青柳に添うて流るゝ小川かな   東里
朝雨に野はくつろきて雉子の声   青蛙
寒い日は寒い日にして梅柳   晴遊
黄鳥の来て整ふや朝けしき   文字
仏壇をひらけは落る椿かな   梅香
若餅に早稲の香もあり新むしろ   風居
月更て朧となりぬ片山家   梅齋
おもかけの幽(かすか)に立や花の鉦(かね)   無安
覆面のゆるみもをかし懸想文   繻ワ
風吹ぬ日は川なりのやなきかな 磐城 倉月
梅さくや古き硯のなつかしき   驚鳥
蝶まふや風呂敷かけし重の上   桂 
おもかけははや七とせやはつ桜   一遊
手のひらにのせて手向ん蕗のとう   素風
山吹の影をそゝくや池の雨   北明
山間の家を根にしてかすみけり   花莚
若草にひと筋雨の匂ひかな   對月
けふり立やうにくれけり花の山   笑山
東風ふくや定まりかねし翌日の空   文字
かきりある花とはしれと散日かな   可覚
黄鳥や羽箒(はぼうき)てとる灸のから   橘樹
酒提てひとつまみ摘木の芽かな   一聲
忘られぬけふや梅にも柳にも   花春
きし鳴や松にゆふ日の照かへし   咲守
東風ふくやさゝ浪立し海の面   喜風

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