須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -063/100page

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道問し家はうしろにかすみけり   水哉
帰るさに余波(なごり)を啼か夜半の雁   醉明
回り来るとしの早さよ御影供(みえいく)   可祝
とう見ても柳にくせはなかりけり   柳哉
初花と今朝はなりけり宵の雨   清章
連翹(れんぎょう)や親なつかしき書院先   其風
ほんのりと花の外面や花曇り   正親
見かへせは香のけふりか野の霞   橋石
汲あけし水の匂ひやこほれ梅   芹節
月の行方へもむかす春の雁   為外
実こほれの草青々と弥生かな   竹栖
また冷のとれぬ光りや春の月   古住
今朝の海けさの山也はつかすみ 大補東京 文字
春雨のふるやうすなり池の面   奚疑
山吹や十分春も深きいろ   笑宇
野こゝろのつくや若菜を摘日より   校山
子につれて遠くも飛す親雀   歎舌
道のなき道たとり行野梅かな   交明
若草のほのめく色や藁(わら)垣根   牛山
梅さくや初午(はつうま)前の宮普請   顔外
うつすりと花に遠のくくもりかな   素柳
若草の数に人らはやこほれ麦   三狙
のとかさのあまりて月も曇りけり   静晴
あたらしき枡て計るや蕗のたう   峨丘
青柳を漂はせけり潮かしら   貞和
梅に月春十分の夜なりけり   東枝
花ちるやひと間静に朝念仏 武蔵 正佳
たくみなき枝のしまりや磯の梅   芦水
をしまるゝ日は立易し花七日 下総 静海
梅は盛り月はさすかに昔ふり   静遊
黄鳥や声先はまたほのくらき 甲斐 為川
松の下行つもとりつおほろ月   菊洲
手向たる水にもうきて散桜 常陸 柳且
もろともに春は行なり山の雲 補助岩代 有耕
春寒し袴の裾(すそ)に苔光る   古仙
雲に入る鳥や岬によする波   盛隣
さはやかに雲棚引や涅槃(ねはん)の日   擣風
揚さうな声のはつみや初ひはり   簡齋
洲(す)によせた砂に陽炎立にけり 磐城 如雲
袖ぬらす雨に香のありねはんの日   朴齋
古墳(ふるづか)に菜の花咲ぬこほれ種   関東
備ふれは鐘もぬれ音や花雫   東木
   佐々木竹樹居士の七回忌追善の    
   いとなみありけるに    
年追うて花咲実のれ仏の坐 春湖
陽炎やあつき会式の七回り   鶯笠
したはしき其年月や花に鐘 有儀
たそかれや眼をしはたゝく花雪吹   蔦二
野の寂を洗ひ揚たり春の雨   三岳
袖ぬらす雫や花の朝あらし   宝蓮
七めくり花に敷足すむしろ哉   晴川
梅か香に整ふけふの会式かな   規 
   旧友の休廣忌を悼む    
世をともにぬれへきものを花の雨   如水
七とせを回りし墓や風光る   幽篁
   夢幻しともわきまへぬ間に    
   なき祖父の七周忌に当りけれは    
七とせもむかしとなりて竹の秋   有竹
着更衣やうきを忘れぬ草枕   楳袖
   亡父か黄泉の旅もはや七年を    
   過しけふ其法莚をひらきしは    
   し碑前にぬかつきて    
あの雲の行方なつかし梅供養   一樹
   明治十六年着更衣  文字雨書 (花押)  

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