須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -064/100page

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53 別荘披露賀摺

   
   芳秋舎庭前の景物を    
   各題に探りて    
柳見て居れはわするゝ寒かな   纒z
籔陰や凍解道(いてどけみち)のさんたはら   蒼仙
佐保姫の陰日南なき窓かな   青葉
梅匂ふ門や夕月朝すゝめ   蕪秋
門出れは浅茅か原やきしの声   柾女
囀にまた戸も明ぬ庵かな   如蘭
苗代に影のさえけり朝の月   雪窓
見る念のなくて静けし鳴蛙 盲人 就泉
池の水ぬるむ音つゝ流れけり 少年 米甫
恋猫のわひしき朝のすかたかな   孤柳
黄鳥や春のうちての果報もの   佳山
かすむ野や手馴し人の鍬遣ひ   藻玉
  別墅(べっしょ)に友を招きて    
見せて居て摘を馳走や芹薺   壮山
  明治十七年二月    文字雨書 印    
     

54 新年摺

   
うくひすやいつもの筋をまたきより   歸童
梅か香やうけよき風の入る戸くち   桃石
たんほゝやちらほら見ゆる伊勢道者   杜郎
けふりたつ野のひとつ家や春の月   偵亮
つれならぬ柳のかけやはつ日の出   蓬仙
菜の花を見にのほりけり日和山   其徳
一日や紙衣(かみこ)のうへに黒羽をり   まさ女
あたらしきものゝはしめや門飾り   関月
もうひとつ鳴せて見たし初蛙   孤山
はつそらや御所の真上に鶴のまふ   霞川
一日についさかせけり鉢のうめ   柳葉
青柳にゆれる酒屋のけふりかな   可鶯
空ひくうなるほとたかしなく蛙   松笠
はつ東風やゆたかにさはる松の音   まん女
月雪のなかにましりてうめ柳   仙鳥
雨ふくむ夜は柳よりあけにけり   稲波
苫(とま)はねてはつ日うけけり舟の人   文字
ひき舟の綱のあふなしつくつくし   蓮里
花に出て花をたつねる花見哉   野耕
にきわしき市の並木やかさり縄   髣セ
あはす手のいちとにそろふ初日かな   雅蔵
夕月や七分とほりは花もとり   菊也
数の子にめてたきはなしはかりかな   眠鶴
ふたもとの松にほひけり日のはしめ   蓮阿
海山のものにほはせて門かさり   春山
遠のけははつかすみなり峰の松   燈眠
一月やはるめく人のゆきもとり   弘道
我はかりきくのてもなし初からす   聞知
おほろ夜の猫呼ひに出る人もかな   菊露
  明治十七年新年  不醉書 印    

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