須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -067/100page

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海苔添へて届く手紙や初便り   萩露
皷草(たんぽぽ)や行先殖る野の小道   露耕
名にめてゝ蝶もあやかれ福寿草   よし井
とりわけて窓の明るし今朝の春   菊露
  初老の春を迎ひて    
我としもひとつましてや春寒し   蓮阿
  明治二十年  秀琳書印    
        丁亥春    
     

58 新年摺

   
畑打や何所(どこ)てもみゆる辻榎(えのき)   青圃
盥(たらい)の水のあたゝかな昼   溪齋
雉子一羽たはこのむまにこしらへて    
いつも鐺(こじり)をあてる潜(くぐ)り戸    
寒そらに海から上る月を待    
しつまりきつて氷る芦の穂    
薄垣に人目さへきる外後架    
肩を基手に浦の商ひ    
嘲(あざけり)をうけた気随を立通し    
一くへたけとぬるき菖蒲湯    
はりたての窓にかんかん雨の音    
厩橋(うまやばし)たちの駄荷かはや来る    
内方の客もすまして寺まいり    
気味あひにふく路次口の風    
唐丸に干鰯(ほしか)の虫を拾はせる    
襦伴(じゅばん)あらひに舟へ飛こむ    
はしめから胡坐(あぐら)もゆるす月と花    
やよひのうちは徒(かち)の日もなし    
二尊院法会の後も冴かへり  
手拭(てぬぐい)をりてのせる月額(さかやき)  
数をよむ文字(このしろ)土間に上るなり    
申(さる)刻かなれはかへる針弟子    
常不断とほる次郎も待こゝろ    
買くすりから食にとりつく    
稲つまのまきれてしまふ宵の月    
ぬるての染る堤あかるき    
相撲とりもよけて遣りこす葬もとり    
たゝむ暖簾(のれん)に野分さからふ    
上かたの噂もやみし状便り    
配たあとへのこる茶はつほ    
かゝさすに早苗見廻る朝のうち    
われる日てりに行々子なく    
浜の砂石の鳥居に吹たまり    
おもしろつくて銭を降せる    
五三日余所(よそ)におくれし花の陰    
ふさけは次も広き炉のうへ    
   上 野    
箒目(ほうきめ)の馳走(ちそう)も見へて花ふゝき   楳山
しら箸に青みのうつる木の芽哉   梅溪
   文字峨町眺望    
水祝ふ新らし舟や残る花   溪齋
人ちらぬ湯立のあとや春の月   青圃
  亥の春               弘美書印 印    
     

59 仙鳥翁古稀賀摺

   
梅うれし雪の白さに咲かはる 西京 芹舎
含みさへあれはめてたし福寿草   稲處
烏帽子(えぼし)着たちから業なり小松曳   稲雄
文字のものにさはらぬ匂ひかな 東京 桂花
春風の色かとおもふみとり哉   三支雄
降積る雪や世の花としのはな 川又
幾千代も経て新らしや年の花 二本松 眠霍
まつ明てこゝろのとけし初日影   蓮阿
七重八重老の曠(ママ)着や小松曳   青山
うくひすの枝ふまへたるちから哉   髣セ
むかしめく姿愛らし小松曳   瓦全

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