須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -068/100page

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若餅をちきり重ねし千代の数   菊露
七種(ななくさ)や是から買ふは千代見草 社中 稲波
梅さくや隣から来る茶の使ひ   まさ女
はつ東風や波静なる夜明ふり   柳波
輪かさりや常には筒の掛ところ   以文
うくひすの初音を藪のかまへかな   松翠
あらたまる年や子供の行義ふり   一羽
取添ひを見に出る畑や蕗(ふき)の薹(とう)   一尾
東雲(しののめ)やはらはら明て初からす   一洲
黄鳥や旭まはゆし障子越し   忍舎
まきれなき春の声なり若菜売   松笠
昇る旭の蔭もうるはし福寿草   孤山
文字やものゝ香深き青むしろ   霞松
立春の姿つくるや垣根草   如月
事足りし草の戸くちやはつ日の出   玉泉
手まりつく影おもしろし茶の間哉   霞鳥
月の出て猶も芽出たし梅の花   夜雪
とし玉に添へて貰ふや梅の枝   香月
朝月の上下に見る雲雀哉   霞山
静なる風うつくしき柳かな   徳月
万才の来てひらきけり筒の梅   萬女
門松や明る戸口に向ふ風   時月
水音の太る柳のみとりかな   霞川
   仙鳥翁の古稀を賀して    
老てなをまさる色香やうめの花   観月
   古稀の春を迎へて    
静さの寄る年波や宿の春   仙鳥
   二十一年 子の春    
     

60 春二吟摺

   
もきとふにちるやほちほち赤椿    
春寒し千反(ひぞ)り切たるもみの板    
片意地に花さく道の李(すもも)哉    
とれかとうちるやら桃はそこらうち    
月に寝て居るなり花に泣上戸    
    鳴鶴
是非ともやなくてならぬは梅の月    
はる風やむしろの上も一世界    
留主もるや椿かもとの銭勝負    
月花のなりふりもして啼蛙    
矢の如き光りも延る桜かな    
    五獅子
   戌子年    
     

61 新年摺

   
我庵のふた柱なり梅家内喜(やなぎ)   蓬宇
年々や松にはつ日は我備   羽洲
はつ烏更によき世を知らせけり   寛和
世の上の月雪花そ三ヶ日   連水
ふりふりや頂いて来て床の上   竹夫
汚れぬは清し今年も着衣始(きそはじめ)   素水
言の葉の幸はふ国や年の花   みき雄
君か代や先弓よりも筆はしめ   閑茶
綱引や常は誇らぬ人なから   蘭経
風はなは届くや不二のはつ霞   竹丘
出入にも門ふくふくしかさりわら   嶺外
手を副(そえ)て子に太箸を持たせけり   山花
一月のこゝろ居りぬ雪ひと夜   只雪
とし立や備へ並ふる物の上   もと雄
万才や市て買れた顔もせす   如泉
はつ鶏や春と定めし人心   蓬貝
貯へし若菜やそれも雪の中   正雄
田つくりや二三日前は市のもの   一晁
咲初て育つやうなり福寿草   梅素
鞠つくや都見たいと唄にまて   嵐水
島ふたつ海にゆかりや初日の出   其華
待詫て聞うれしさやはつ烏   晴湖
うつくしき色や姿やかさり海老   風船

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