須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -069/100page

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内に居る日和てはなし梅の花   其則
拝みする仕度なかはや初からす   双鳥
朝起に清きこゝろやはつ手水   夏山
世の塵もたゝて美し初日の出   鳩雨
人こゝろ大きく見えつかゝみ餅   東川
わすれたきものは眼かねそ花の春   花水
見た夢の跡また見たし宝舟   井上
いねつむやよくに放れしさまもある   山風
万才や隣へいそくふりもなし   西秀
眼続きや梅も柳も初日影   房麻呂
人の日や野は曇りなき松の声   五籟
明る戸や庭樹の雪も年の花   龍岱
破魔弓や女子の中の男の子   宇山
橙の色やそれにも裏おもて   秀巖
  明治廿四年春    秀林書印    
     

62 春俳諧摺

   
雪は日にほとほと落て梅白し   而后
打てのち霜におとろく畑かな   未足
ひとり煮た茶の気に入し霞哉   尋香
春雨や雲より上の一木立   静處
黄鳥を聞くなら加茂は朝参り   自長
網ほして梅なちらしそ磯の家   壮山
洗はれて猶しほらしき根芹かな   可陽
あさあさや梅を養ふ霜けふり   潮光
山畑やうつより畦(あぜ)に念の入る   乙瓢
行方へむかふやうなりはるの風   指石
うくひすの折には友を追にけり   元史
声足りて空にひとつの雲雀哉   砂山
日表やみな梅もちし島の家   永年
あさ風の柳に露の芽出しかな   一止
宵こしのくもりを山の雪解かな   鷺眠
おもしろしこゝろに春のしみて来る   芹舎
ふた声を宵あかつきやはつ蛙   完伍
永き日の影とゝきけり絵の具皿   西翁
行雁やつゝまやかなる竿ひとつ   悠平
笠ぬけは野は暮てあり春の月   菖雨
東風ふくや何をすなとる島の舟 如猿更 渭川
馬の上からも見てゆくすみれかな   楳臣
菜の花やまかぬ覚えを垣の外   月栖
柳見て居れはわすれぬ肩のこり   白羽
夜を昼へ啼のはしたる蛙かな   武貫
降てやむ雨に春そふ暖みかな   許十
梅か香や扇かさせし莨(たばこ)盆   草露
青柳や水は堤の曲りなり   左慶
蕗のたうそれにも春の色香かな   如白
それて来て町の真上のひはり哉   良可
雁の啼宵は過けりはるの月   白亥
くらへあふものなき空や梅に月   梅圃
空色に水もたゝえて啼かはつ   保久賀
水のみとおもふかるみや白魚網   可候
風みゆる樹はみな遠き柳かな   禾田
よきほとにのほる家路や梅の花   茂精
黄鳥やうしほの花を声の先   斧年
すくひ来てもてなさるゝや蜆汁   養瓜
頂は雪にふもとのかすみかな   文字
笑ふ子にしはし手のひや二日灸   葭洲
気の付てみれは障子に月と梅   松人
船人の笠のちひさき霞かな   宇山
梅か香や覚悟の外の道ぬかり   古棠
子もたすの家は何してはるの雪   柳壷
春風や紙漉川(かみすきがわ)の浅みとり   文海
浦の夜のすなほに明て梅の花   李曠
岨(そば)の日のあたりかへすや窓の梅   露心
落つきのよき雨おとや春の宵   宗普
香のみちてそよりともせす梅林   泰山
花にさす日の芳はしきすみれ哉   有舎
舟て聞黄鳥ゆかし風のひま   李朗
暮際の声とおもへぬひはり哉   成章

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