須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -070/100page

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あたゝかな雨に菜畑麦はたけ   精器
かるかると人の立居やうめの花   鯉勢
うくひすや川を越れはみゆる家   卜早
草の香の中にまはらやつくつくし   松塘
黄鳥やのそりと立し聞功者   見外
うら表ありや桧原の遠かすみ   香芸
見渡しは雪の広野や蕗のたう   可嘯
流れ出し雨水澄て春の草   雪年
肘まくらせし夜はしめておほろ月   巨椎
山川や雪解にそたつ魚もある   留木
暮たれは夜も又親し月と梅   雪當
立鍬に手拭かけてかすむ畑   太年
薮川の風おと絶て月とうめ   應可
梅早し吹井のもとの凍さくれ 下総 龍湖
雨ふるふ羽音も高し朝の雉子   三交
吹さらす磯畑清しうめのはな   其春
夜も春になりぬ白魚をとる篝(かがり)   佳節
啼ほとは声のふるひす春の鳥   明水
梅を過柳をすきてあやせ川   御来
幾處もひはりのあける広野かな   五具
鶯の来し木の間より去にけり   蒼山
山鳥の尾かさはるなりはるの水   春湖
長閑さや裾(すそ)もたもともかるうなる   草甫
蝶の羽にかるうさはるや山の風   杜青
畠から見おろす畑やきしの声   真武
日のさして雫もちけり梅の花   草栖
     

63 児川追悼摺

   
  くるゝまて  児川居士    
    西もつかへす    
      はつしくれ    
吹もとす風もなき日そ帰る雁   芹舎
岩代のいはてかひなし雪見舞   蓬宇
なつかしやかなしや六つの花消て   曲川
なつかしきものゝ限りや小夜しくれ   永機
丘墓に手向こゝろや積る雪   素水
春寒し安達太郎颪(おろし)今日聞て   三支雄
かたそうてほろりこほれつ冬椿   精知
夕波に一羽かくれて友千鳥   成雅
道ありと聞も本意なし雪の山   青宜
ひと筋の道にはあれと雪の旅   可然
かるしとはかなしき名なり川の水   呉仙
みにうかふ萩の細ろや枯て後   尋香
寒菊や言葉少なに見て戻る   雪斗
聞袖に落ては氷る涙たかな   採花
水かれてむなしくくれる川瀬かな   旭齋
玉にさへならて消るか氷る露   宇山
こゝろおくかたに聞へてしもの声   等栽
川かれて跡は淋しき千鳥かな   菜史
ある用の思ひ出されぬ小春かな   壮山
秋は来ぬ蓬の実飛ぬ水澄ぬ   有儀
耳底に入るや萩吹風の声  
暮て行秋の祈念や枯尾花   文彦
俯(ふ)し拝む卒土婆(そとば)に涙た時雨けり   聯岡
かな付の本見て居るや榾(ほた)明り   文字
かけ見るもはやひとゝせやさし柳   太甫
蘭の香の今に尽せぬ庵りかな   忍山
凪(ママ)の日あしをけつる麓かな   馬巖
門川の浮瀬も越て山の月   里楓
虫の音を辿(たど)り辿りてあきの旅   梧窗
露散るや今朝まて玉てありなから   如風
すゝむしのなくや一坐もりんとして   萬女
ひき出した茶も音つれてはつしくれ   桃石
炭くたく音も余寒の別れかな   文字
黄昏て霞たなひく小春かな   東昇
遠近けき闇ははなれし梅の花   槙寮
春雨や明のこりたる松の声   其徳
幼子の下駄はき習ふ彼岸かな   蓬仙
見返れは襟もと寒し秋の風   槙窗
降うちに煙りとなりし春の雪   蓮里

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