須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -071/100page

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月入て面かけ寒し冬の川   蟻住
吹替る風に秋たつ夕へかな   政女
招かるゝさまや尾花の前うしろ   黄菊
寒菊や小窓に匂ふ夕日より   影山
山を出る日を脊(せ)にうけて浮寝鳥   素吟
居勝手の巨燵(こたつ)はなれて雪見かな   隅水
門川のいよいよ清しかれ柳   雲冷
遠のきし千鳥の声や月の窓   松古
杖持た袖にのこるやはつしくれ   蘭壽
萩はきのかれたるうへや霜の花   青山
十月やうしろからさす日の匂ひ   一尾
筆さきにしかとこたへる寒かな   高畑
月かけの洩る籬(まが)きや菊の花   鴫音
花うりのあとしたひ来る小蝶かな   一笑
なく蝉の声うつりけり小松原   一石
初雪や煙りとなりし朝のかけ   千代迺
谷川の音も静かや冬の月   梅暁
松風の音ちらしたるしくれかな   寿山
にきる手のうらへもれたる螢かな   石寉
遠くから眼たつ岩間や帰り花   竹石
雲消て山根に白しむめの花   楽生
香焚て置や雪見の奥坐しき   東枝
はつ雪や杖つき揃ふにわか客   盛井
わすられぬ秋の名残や散る木の葉   菱井
鶏のかた足かくす寒さかな   浪丸
峯の日も時雨にかけをぬらしけり   浪房
こからしやまとにさし込月の蔭   正雄
枝川や二た手に別るむら千鳥   煤茂
気のつけは袖のぬれけり露時雨   一應
又居たと思ふに立し池の鴨   一遊
きよきこのうへにも清し六つの花   雅通
はつ秋や今聞そむる宮の鈴   有芳
照返す日の親しさや夕紅葉   孤山
かれ草もしみこむ音や冬の雨   旭露
黄昏の鐘のひゝきや散る紅葉   文字
たそかれや湖水を見越す冬木立   霞川
蚊もたへてとこやら淋し秋の月   竹葉
萩はらを我ものにして行々子   住吉
茶の花や坐しきに残る日の匂ひ   一羽
ひつし穂の花も匂ふや小六月   稲波
寒菊の香は其儘に残りけり   配應
冬かれて自由自在の月夜かな   結心
寒菊や机のさきに経る日数   露洒
我かけも身にしむ冬の月夜かな   竹堂
薪(まき)積て戸口もせまし冬構   志全
水底の砂のひかりや冬の月   仙島
柳葉に梯(おもかげ)のこる時雨かな   観月
今少しほしき夕日や夏の雨   鯉住
青簾(あおすだれ)もるゝや奥のはや灯し   椿笠
力なく窓にさはるやかれ柳   一西
うきことのかれ野にぬらす袂哉   蓬阿
神の日の見えてしくらし春の月   文字
閉る眼は寒しひらくも物たらす   柳依
耳うとき身にもこたへて霜の声   菊也
池の蓮寒さ残して枯にけり   菊露
跡したふ雪の山路やゆふ日影 催主 布村
   師の霊前に    
くりかへすことの本意なき寒哉   瓦全
   墓前につきぬけて    
世をすてゝ行しはかなし面影を    
 我かころも手の露にのこして 守義
玉骨清姿似去年 永留遺愛転堪憐    
隔堂鶴髪今猶在 哭折一枝棒墓前 謙齊
     

64 可祝還暦賀摺

   
 樫村老君六十ひととせの齢(よわ)ひを    
 祝して    
老たりといふ人もなく六十あまり    
 ひとへにことし若かへるらん 東京 安昌
もり山の茂みの中のふかみとり    
 いやさかえ行樫のひとむら 駿河 政徳

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