須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -073/100page

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何事もいはすはつ日の神路山   耕雨
鏡とく日そうくひすも来てうつれ   之有
こえほとに水も濁さぬかはす哉   梨塘
動きなき御代や亀さへ岩の上   梅里
下りた鶴薺(なずな)の日まて詠めたし 尾張 羽洲
乙鳥や奥ある家の縁すたれ   □□
わすれても春といひたき子(ね)の日哉 出雲 曲川
試やとりの子紙の筆はしり   愛石
折る人をしかるや余所の梅なから 長門 梅宿
立ならふ松はありても梅の月 豊後 嶷北
神風もおのつからなりはつ日の出 近江 洗玉
おのつからよきよみ初や伊勢暦 三河 蓬宇
やすやすと日はたつものゝ余寒かな 遠江 木潤
湯上りやまつ今年着に手を通す 甲斐 竹良
よろこひをこもこもむすふ昆布哉 信濃 雲老
水引やむすひし色もとしの花 下総 旭齋
一里ほと九十九折(つづらおり)来て梅の花 上野 桑古
沖なりもわすれし夜なり春の月 越後 木甫
誰か見てももうたしか也遠柳   晴雲
年々や馴た手際の門かさり   丈芭
みなもとは梅かやなきか京の水   栞丸
注連(しめ)かけて置たし人のこゝろにも 羽後 文字
ひとふしは今朝の色なりつくつくし 後志 墨雨
橙も青きにもとる弥生かな   不争
根にすこし下草生へて畑の梅 陸前 甫山
文字と聞たはかりや春の山 岩代 忍山
初かはす鳴や寝経もやめた夜に   袋蜘
文字にはや住なるゝ二日かな   苔水
はる雨やゆるりと話す琵琶法師   琶岬
梅か香や出むかふ孫とかへる道 須賀川 暁窓
あし高にまたひきたらぬ霞かな   文起
里の夜を鳴ひゝつけたるかはつかな   漸風
東風ふくやひときは育む麦の色   彦之
如月(きさらぎ)の空一はいや鶴のこえ   梅洲
たのしみのある寒さなり春の月   松峰
春雨や鳥の居る木は鳥はかり   米甫
ひとりつゝ来たまる客やうめの花   文視
あらたまるとしやきのふは耳の垢   石峯
とこしへに千代のかさしや若みとり   蓬月
うめ咲やふうわりしたる餅の味   一睡
佐保姫と名のつく雨のあしたかな   北外
静さもせわしき中や三か日   素ー
いつくしみなき家もなし乙鳥の巣   雪窓
はらのへるはかりも嬉し春のかせ   有葉
家々やおもひおもひのひな祭り   尚雪
よめか君寒いもしらてまめまめし   楮丘
世の中や独活(うど)のにかみも好嫌ひ   藻玉
   還暦の賀詞書略す    
幾春もくりかへし見よ花こよみ 駿河 白暦
若かへるとしの栄耀や梅やなき 岩代 有儀
さかえ行老木の梢(こずえ)やうめの花 磐城 里雪
福わらに千代千代とよるすゝめかな 七十翁 波光
梅のぬし生きこよみともいはれけり   風草
としふるやよはひは松のふかみとり   文字
万歳の来て笑はせる祝ひかな   梅月
うめか香や一しほ家のあたゝかさ   青橘
相生はおなし実生や松の花   藤陰
文字の根しめの亀のよはひかな 有無良
にきやかな屠蘇や雑煮や老の春   雪竹
花ひとつふえて根つよし福寿草   一聲
はつ空やすくれて高き松一木   松山
ある中に一羽ぬけ出て初からす   一松
しかと根をしめて伸もつ柳哉 七十七翁 嘉三
念入て見る月花やはつこよみ   両山
まつ風も波も音なし初日の出   生石
幹老て猶香の深し若みとり   竹楼
鶴は舞亀は唄ふて老の春   真山
万歳の笑かほをふくむ戸口かな   雪山
又ことしふえて根つよし福寿草   素風
かゝやきの殊にうるはしかゝみもち   馬錢
若かへる春いくたひそまつの花   起風
門まつや千代も栄ふる構ひふり   緑竹
千代のせて大船つくやはるの海   竹蔭
のひる日を沢山もちてうめの花   如松
としをふるけふのいはひや松の花   利成
猶のはす糸あまりありいかのほり   隅東

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