須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -075/100page

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65 竹文字菴還暦賀摺

   
  功成て身退かんとする    
  竹文字菴か還暦を賀す    
    暁窓
十かへりのみとりは立て香に匂ふ    
 亀のよはひもあら玉の年   壮山
やまほとのあらめ荷造る賑はひに   文起
 にえたつ釜のふたのはらはら   尚雪
黙然と更すばかりの草の月   漸風
 袷を着れは襟もひやつく   琶岬
  下 略    
ひきしほる大和こゝろや弓はしめ   暁窗
山里も住めはみやこそ月と梅   文起
また風もしらぬ顔なり雀の子   尚雪
鳥高う飛やそもそも春の風   漸風
うくひすに勝をゆつりて朝寝かな   琶岬
唐からし売友にせんとしの暮   壮山
とそ雑煮ほかのゝそみはなかりけり   同  
望(もち)の夜もまたて真白し藪の梅   同 
  明治癸巳の抽春應需俳林書 印    
     

66 新年摺

   
良き香に    
 春先得たり園の梅 三河 蓬宇
稲積も    
 嘉例になりし庵哉 岩代 壮山
高低に    
 おもむきかへて福寿草   嘉金
淡雪のちらつく    
      中や鳥の声   春鹿
先梅にはるをしらるゝことし哉   可秋
稲上た眼にうかひけりふしの山   其静
かしは手や松の梢は初からす   梅玉
若水や梅の香も添ふ汲ところ   花香
白魚のはしりや籠も新らしき   米花
明の春むかしにもとるこゝろ哉   春江
初鶏に甲乙もなき家なみ哉   竹窓
今朝の春老し心はなかりけり   芦麿
尾かしらにちからの見えて小殿原   南齢
戦(そよ)くとて眼にふれ易き柳哉   支仙
  午とし    
     

67 新年摺

   
いふ事の今年はふえし御慶かな 東京 其鳳
有丈の窓明はなすさくらかな   素水
万才の餅も上戸とまうしけり   鳳拝
きかぬ日はないに待けり初からす   素石
居籠(すえかご)のたくはへものや夷鯛(えびすだい)   永機
人先に初日拝むや隅田川   桃齋
天地(あめつち)や花も杉間の神路山   紫香
殊さらに日の暮かねて花の雨   梅甫
寒い朝波にも見せぬ初日かな  
過せしを手柄顔なる雑煮哉   箭浦
文字や家に生るゝ風の色   竹童
事軽に要(かなめ)のへ行年賀かな   一草
はつ夢の欲には愧(はじ)もなかりけり   抱節
五歩十歩出れは川也初手水   採花
ほうらいや我にも得たる山ひとつ   鼡年
空に先みちて夫(それ)から初日の出   幹雄
一日や我をわすれて愛たかる 武蔵 其獨
斯(こ)うも又来揃ふものか門礼者   角々
波に花咲せて昇る初日かな   暁雪
たのしさや梅のかをりの一日宛(ひとひずつ)   史遊
御降(おさがり)や一日連のしくるなる   竹隣

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