須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -077/100page

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田作も手造り酒も年始かな   仙木
はつ夢やさめてもしはし其心   友利
白菊に肩くらへたる黄きく哉   和川
御降を収て雪の朝ほらけ   芋村
穂長こそ山鳥の尾の類(たぐ)ひなれ 播磨 鏡花
いはすともしれた愉快や国の春   豊邨
八(や)ひら手に打出したる初日かな   菁岳
ひと声はまたほの暗し初烏   笠雅
我庵や木はちさくとも梅柳 西京 犂春
はつかしや軍(いくさ)せぬ身も花の春   聴秋
三日たつ年や加茂川こす礼者 浪花 無腸
年々やめてたくかしく宿の春   貞英
狙曳(さるひき)や旅籠(はたご)につけは一人旅   北水
輪餝(わかざ)りや一つあまりて米たわら   素吟
勝栗やこほれしおとも弱からす   梅守
若草の中や月さす水溜   支仙
楼(たかどの)に筆とる朝や初霞   露城
月夜よし影にも梅の面白み   南齢
めてたさを唱まとめて三の朝 美作 尾川
ともかくも今年のものよはつ烏   星洲
八千代もと君か代うたひ始けり   居元
千本見る花のはしめや福寿草 柏耆 聴水
月花かちからくさ也庵の春 備前 鶴影
ゆるきなき世の数取や羽子の音   静月
初東風や水のうへにはまた見へす   起芳
峰の雲消す動かす初日の出   峨嶂
海山をへたてゝ筆の御慶かな   多米女
くゝり出て額なてるや梅林   如水
万代の匂莟(つぼみ)てとしの花   桜處
若餅や一杵つゝに音丸し 備中 蛙渕
はつ東風や宮島の梅呉の松   春園
輪かさりや家のむつみを一まとめ 備後 桐陰
箸おとの春にもせはし蜆汁 周防 善秀
一日や雪も祝のものらしき 紀伊 松年
水に影さす迄いそけ初烏 阿波 士徳
春の夜や申さは絹の肌さはり   抱清
文字の色や千歳も祝はるゝ   如風
旅人のあしもとゝめす去年今年   蟻城
しら雪にぬくひし觜(けづの)かはつ烏   逸外
我梅に人の柳や門つゝき   芳桂
千代かけてさめぬ思よ屠蘇の酔 讃岐 真海
長閑さや野にはあらゆる鳥の声   箕柳
出嫌のやうにも見へす嫁か君 伊予 文字
動かぬは家の宝そかさり臼 豊前 友村
門松や相生ならぬ家もなし 筑後 楓陰
大門や人と并(なら)んて出る胡蝶 石見 朝烏
訪たくもなるや柳のそよく門   其楳
とちらから向うてもよしかゝみ餅 三河 石芝
柴の戸や梅に日記の筆はしめ   魯石
わか水や国のはしめは海と山 遠江 木潤
何事もわすれて拝む初日かな   可然
諸人のこゝろひとつや国の春 駿河 雪香
はつ空や富士は幾世の神の山   以章
山松の風門まつにうたひけり   雪外
年男親に親あるはなしかな   對嶺
花七日けふも取出す硯かな   芝雪
こえのあと愛たくしたりはつ烏   雲眠
追儺(ついな)から手捌(てさばき)重ねてとし男   星桐
花やかなものゝかきりや門かさり   東海
万代を栄ゆくてふ松かさり   和翠
注連餝り扇てわけて潜りけり   頑石
はつ日かけことし大きう覚けり   城北
峰の雪つゝむてもなし初かすみ   晁水
草の戸も事とゝのひぬはつからす   九成
折たさや年のかしらの梅の花 相模 宇山
買初や梅の折枝活るほど   秀ー
誰か来ても一日ふりのはなしかな 伊豆 三友
花なれやとしの旦(あした)の人こゝろ 甲斐 飛水
一日や屠蘇に先たつ茶の任(つとめ)   水西
よみさしの経黄鳥にゆつりけり   計月
動かぬは柳よ水は流れ行   鷹居
昼過の田の水淡き霞かな   守拙
行あひやしらぬ礼者のなつかしき 美濃 竹籟
はつ東風の寒みも清きあした哉 信濃 市心

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