須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -080/100page

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黄鳥や鳴て前向うしろ向   百年
年経たる柳ゆかしや鶴かをか   北竹
眼にはてゝ耳には遠きひはり哉   芳逕
鍬杖にふかるゝ人やはるの風   箭浦
川に添ふ竹原長し風かすむ   壮山
遣り羽子や百とかきらぬひとつより   可祝
こゝろなく踏も本意なし春の草   一松
降出しをしらぬ夜明やはるの雨   朴齋
鶯やまた月かけの朝日山   北水
そつくりと明て不二見ることしかな   素風
好もしき家の構や月と梅   一聲
舟繋ぐ柳もありて蜆しる   雪竹
やり羽子を扇てうけてわらひけり   清山
早むしの綾とる軒の暖み哉   如雲
出ぬ日の間をしたるゝ柳かな   忍山
出る先に早立向ふかすみかな   太甫
長閑さのけしきまとめて丘の家   苔水
平地や柳は低し家高し   甫山
薄くらや宿なし猫も春の情   友山
旅寝よき月日となりい草の萠   文字
香に酔て立わかれけり梅林   月静
文字の外にものなき一間かな   一枝
来たつれの減て行のか雁の声   乙瓢
春の雨はれて草木のにほひかな   雲石
数咲てさのみにちらぬ椿哉   完和
花盛り頓着はないやうに   寳、
松風のしつまる頃やはるの月   葛雄
とう見ても女子に似たる燕かな   桂圃
遣りとりもたしなきうちの白魚哉   其流
常々のたしなみ見せて着衣始(きそはじめ)   半山
先立は誰かむすめ子やすみれ草   雉守
黄鳥や是か老るとおもはれす   梅姿
春風や不二にむかうて懐手   松隣
高低によらぬけしきや春の山   思船
来た道をわすれす雁の帰る声   芳泉
  乙未のはる 索によりて喜寿翁書印    
     

71 新年摺

   
はつ鶏や聞もらされぬ声の張り   如九
東から来た声らしく初からす   拾柴
万歳の万歳のとて御代のはる   花松
あらたまる声やからすも明の春   栄月
文字や鶴亀うたふ兄弟 三更改 琴雨
こゝろよき川の流れや初手水   花悦
若餅やくはる乙女の誕生日   長江
御慶にもめてたき数や勝軍   進水
はつ日影世は豊かなり松につる   梅秀
 初夢や罪にも    
     ならぬ隠したて   支仙
 落着たものや    
     長者の門かさり   潮逸
   乙未とし    
     

72 新年摺

   
花ならて春に広かる柳かな   青宜
儀式ある隣から来て庵の春   採花女
初空を鏡にむかふ心かな   箭浦
籠提てさすか都や薺売   芳泉
蕗味噌や梅見る隙に出来てある   壮山
囀りやきのふは梅にけふは松   如雲

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