須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -088/100page

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摺箔(すりはく)のよき衣着たり小殿原   薫甫
言の葉もかはらぬ御代の御慶哉   歌山
鶯の嘴向く方も恵方かな   □□
年毎に買うも嘉例や若夷(わかえびす)   □□
心まてぬくうたやふな初日かな   陸鼡
初鶏か啼や嬉しい鐘か鳴る   龍昇
書初や覚束なくも師をまねる   竹司
三笑の図もかをらせて福寿草   華陽
咲たりや我庭なから梅のはな 百花園 菊塢
目鏡にも潮井そゝかんはつ暦 筑後七十二叟 三千代
独り汲む屠蘇や皺(しわ)手を遣ひ初 七十五叟 三猿
呑過す朝茶も梅のさかり哉   乍黙
夜けしきの詠めはしめや月と梅   花曉
不知火(しらぬい)の消て間もなき初日かな   晴雲
花らしき雪も降りけり初御空   □□
梅か香や老ても筆は隙のなき   □□
琴弾て松も遊ふかけさの春   嘯乕
ちさくても花に幅あり福寿草   律二
月花も及はす屠蘇の酔こゝろ   碧水
夕くれや凧のすわりし海の上   米花
老たりとおもふ人なしけさの春   被笑
御降(おさがり)やさす傘のひらきそめ   慶雨
年の寄る事は待たねと花の春   南柯
玉拾ふ言葉の海やはつ硯   如翠
世は春と成りけり野山青みけり 阿波七十二叟 喃々
初空や海もおとらぬ青たゝみ   長州
暖かや寒さや梅のかけ日向   良美
寸の伸尺のかけさす柳かな   竹雨
をしへぬに能も覚へて手まり唄   萍舟
不二晴れぬ鶯啼きぬ国の春 粕壁 月竹
初御空一家団欒屠蘇の人   不及
植たした松を栞(しお)りや春の雨   魚遊
豊なる御代の光りや初日の出   凡遊
世に稀な齢もつみて梅のぬし   凡美
鶴の舞ふ日こそ美し初御空   凡壽
ちと斗(ばかり)七草つむや盆の上   公白
耳のそこたゝいて清し年の幸   凡子
不二のかけうつして汲や初手水 駿河 静雄
旧年の義理もたしたる年始哉   丈雨
鶯や上音下音もぬかりなく   一龍
若水やさける釣瓶(つるべ)の新らしき   可聴
留守とても礼者に薫れ軒の梅   枝雪
文字の後にちさき鼠かな 相模 桂華
裏白やおもては去年の深山草 上総 小華
御降りは晴れて静な日さし哉 行徳 梅荘
まつ春の魁(さきがけ)ならむ福寿草   文字
輪飾りや幾世かはらぬ親柱   静松
山里や御慶かねての泊り客 甲斐 雀艸
新らしき日の新らたなり初こよみ   玉林堂
名月も先つ二つありはつ暦   葉舟
海は夜の明てさしけり初明り 磐城 三扇
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一二輪梅も咲かせて庵の春 武源雪連 楳園
啼わけし去年と今としや家鶏の声   孤帆
年立や人の行かふ街より   五十丸
懸鯛やかける柱も尺余り   青湖
翫(もてあそ)ふ品数多し松の内   青岳
去年よりも若ふおもふや春の客   源納
さわりなき朝日や宿の福寿草   東里
よき春のしるしか梅の蕾(つぼみ)かち   梅洲
若やきし老も心地そ着そはしめ   朶橋
新らしき墨の匂ひやはつ硯 足立 文字
何気なく買うて見にけり懸想文   露月
潔よし実に日の本の初日の出   竹雨
乳母か脊(せ)て見出して指す若菜哉   杏林
千代の香の曳手に匂ふ小松かな 大宮 蛍村
正直は勤に見へてとし男   松月
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紫の峰から来たか初からす 金沢 秋香

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