須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -089/100page

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おし開く大戸にのつと初日哉   定雅
七五三懸て正月させん飾臼   竹翁
幾度も潜れと嬉し松かさり   一釜
年男今朝はゆるさぬ朝寝かな   魯衲
言の葉の尽せぬ空や初日の出   浩養
一りんて梅の根しめや福寿草 新川 如白
初市や買人も礼をいふて行   一定
豊年を積れやつもれ春の雪   豊洲
苔蒸した梅や中々花の艶 七十七叟 気洗
隣から笑ひに来たり春の宵   一松
庵の夜は雀に明けて初日かな   飛洲
おのつから心も広し初御そら   静歩
鶯やとめて置きたき客の沙汰   梅甫
文字のかはりや床の鉢の梅   素玉
枝ふりも見立ものなり門の松   猫皮
変らぬは嬉し我身も梅か香も   翠峯
遣り羽子や囃(はや)さるゝのも若いうち   壯葉
三日月の見添ものなり梅の花   なかや
初鶏に古い事皆わすれけり   秋芳
一羽舞ふ鳥の目立やはつ御空   香我
筆はしめ先寿と書にけり   秋翠
やゝありて啼鶯の機嫌かな   如水
屠蘇の酔もらひ笑ひをされにけり   菊彦
鏡もちうつし迷はぬ心かな   菊峯
雀々さて賑はしや今朝の春   一也
白梅やわけても清き朝の色   翠崕
文字に塵もたゝせぬ箒かな   尚古
末広に髭ふりわけて飾海老   百年
新らしき色や匂ひや梅柳   素正
松も千代竹も千代とや門飾   梅峨
夜明れは霞となるや山かつら   疲梅
戯れに彩り見たき白魚かな   晋江
草の戸の幸や恵方に当る不二   龍吟
梅のある方から先へ御慶かな   碧海
走り芽ときのふは見しに若菜哉   医俗
ゆったりと懸蓬文字の夜かけ哉   宇黄
梅咲て日に日に春に成にけり   釣雪
鶯やふくるゝやふなさくらもち   葵陽
棹そへた田舟しほらし梅の花   秋興
わたつ海や先新年の春かすみ   □□
一列に並んて雑煮祝ひけり   静山
七若菜雪も匂ひに出にけり   芦丸
明の春海静かなるかきりかな   香城
遣るも殖へ貰うもふへて御年玉   月邨
静さに音も聞へてはるの雪   てつ子
友とちはふへて愛たし羽子の音   かつ子
隣から垂て嬉しき柳かな 八十三叟不白軒 梅年
梅か香は梅におされて春の月 雪中庵 雀志
納むるも名残をしさよ古暦  
居並て静けし年の湊船  
 明治三十六稔新陽    千秋孝試筆 印    
     

80 風見草

   
 風見草    
   今年還暦の春を迎へて    
若水に若かへりたる心かな   文字
 鶴の声聞く門松の上   鬼骨
八十嶋は霞の奥にほの見へて   暁雨
 ちらりほらりと帰る釣人   荻露
稲筵徐(いなむしろおもむ)ろ風に月もさし   蟻住
 萩のこほれもふさやかな年   桃石
   賀 章    
色かへぬ六つ十かへりの松清し   嫦娥
茂れるや古木とみへぬ文字(てい)の幹   孤邨
帷子(かたびら)の浅黄にもとる齢かな 六十老 漸風

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