吉田冨三記念館だよりNo.7号 -004/016page

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がんはDNAの病気

関谷剛男先生

医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構研究顧問・国立がんセンター研究所 客員研究員
関谷剛男

DNA

 2001年はヒトのゲノムが解読された年といわれています。ゲノムとはヒトが生まれ、生きて行くために必要な全ての情報のことであり、その実体はDNAです。ヒトの細胞は核を持っていますが、この核の中にDNAはたんばく質と結合した染色体の形で存在しています。DNAは二本の手すりからなるらせん階段のような二本鎖構造を持っています。五個の炭素でできている糖がリン酸を介してつながったポリマーが手すりに当たる部分です。それぞれの糖には塩基と呼ばれる有機化学物質が一個ずつ結合しています。塩基にはアデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)の四種類があります。二本鎖構造はそれぞれの鎖上のAとT、GとCの間でできる水素結合で形成される塩基対で保持されています。この塩基対がらせん階段の階段にあたります。ですから、DNAの中身は塩基対の並んだものということになります。塩基対は必ずAとT、GとCの間で形 成されますので、片方の鎖でのA、G、T、Cの並び方がわかれば、もう一方の鎖上の並び方も自動的にわかることになります。普通、どちらか片方だけのA、G、T、Cの並び方、すなわち塩基配列を示してDNAの内容を表現します。
 核の中にはお父さんから受け継いだ23本と、お母さんから受け継いだ23本の染色体が対になって存在しています。このうち一対は性染色体で、男性は]染色体とY染色体を持ち、女性は二本の]染色体を持っています。したがって、ヒトの細胞は46本の染色体を持っていて、遺伝情報を二重に持っていることになります。一対23本の染色体に含まれるDNAの情報がヒトゲノムの一単位になるわけです。このヒトゲノムは全部で約30億個の塩基対で構成され、23個の断片に分けられて 染色体に含まれています。ゲノムが解読されたというのはこれら30億個のA、G、T、Cの並び方がわかったということです。
 DNA塩基配列のうち酵素でRNAにコピーされる部分が遺伝子です。このRNA上に写し取られたA、G、T、Cの配列を情報としてたんばく質が作られます。たんばく質を作る遺伝子の数は3−4万個と 予想されています。様々なたんばく質の働きの総合で細胞はそれぞれの機能を発揮し、ヒトがヒトとして正常に生きてゆけることになります。

がんとDNA

 現在、日本で死亡される方の三人に一人はがんが原因です。このがんを作り出す情報も遺伝子にあります。もちろん、ヒトはわざわざがんをつくるための遺伝子を持っているわけではありません。細胞が正常な働きをするために必要であった遺伝子が変化して、がんを作る遺伝子になっ てしまうのです。DNAのA、G、T、Cの並び方が変わってしまったり、並び方の一部がなくなったり、逆に増えてしまったりすることが原因です。ですから、がんはDNAの病気、遺伝子の病気ということになるわけです。
 インターネットで国立がんセンターのホームページを開いていただくと、がんを防ぐための12か条を見ることができます。
 1.バランスのとれた栄養をとる‥脂肪の取りすぎはがんと重大な関係があり、逆に、ビタミン類や食物繊維などは発がんを抑える効果があります。
 2.毎日、変化のある食生活を‥濃度はそれはど高くありませんが食物に発がん物質が含まれていることがあります。


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