ふくしま海洋科学館学習指導の手引き -048/097page
No.5 潮目の海の科学
(1)潮目とは
潮目とは、細長く伸びた海面上 の筋で、その筋に沿って独自の波 が立ったり、流れ藻やゴミ、泡など が集まっている場所をいいます。
できる要因によってさまざまな ものが知られていますが、本施設 の展示テーマとしている「潮目」は 黒潮・親潮という性質の異なる大 きな流れによってできる潮目です。 この二つの大きな流れによってでき る潮目は互いに勢力が強く、出会っ た後も混じり合わず互いに分かれて 太平洋を東へと流れていきます。
また、身近なところにも潮目は 存在しています。例えば、河口にで きる真水と海水の境目や、発電所 等から出る暖かい水と海水の境目 等でも見ることができます。一口 に「潮目」といってもさまざまなものがあります。
(2)黒潮と親潮
フィリピン沖を起源とし、日本 の南岸から東方に向かって流れる 大きな暖かい流れが黒潮です。黒潮 ほ、流速約5km/h、幅が100kmにもなるところがある世界有数の 強い流れです。また、平均水湿が 約20度にもなるとても暖かい海流 で、とても多くの種類の生き物た ちが生活しています。一方、親潮 は、ベーリング海やオホーツク海 を起源とする北から南下する冷たい 海流です。流速は約1km/hと黒潮 に比べとてもゆっくりとした流れで、 平均水温が約5度の冷たい海流です。
ここはプランクトンが大量に 発生し、それをエサとする魚たち が集まる水産資源の豊かな海域と なっています。
(3)朝日の海の恵み
親潮の源流域では、海水の勇昇 や鉛直混合により深層の栄養塩豊 かな海水が表面近くまで昇ってき ます。この栄養塩豊かな海水を 起源とする親潮に、春から初夏に かけて太陽のエネルギーが降り注 ぎ、大量の植物プランクトンが発 生します。さらにそれらをエサと する動物プランクトンも大発生し、 回遊魚たちがそのエサを目指し、 南の海から潮目の海を越えやって きます。やがて、プランクトンを 食べ産卵の地を目指す回遊魚たち は、潮目という大きな壁にぶつか ることになります。
この海域は、温度差が多いとこ ろで10度以上もあり、さらに塩分 も異なるため魚たちにとっては大 きな壁なのです。従って、回遊魚 たちはできるだけ温度差の少ない 場所を通って南の海に戻ろうとし ます。温度差の少ない場所は魚が 集まる場所となり、この場所は漁 をする最適な場所となります。