ふくしま海洋科学館学習指導の手引き -063/097page
タッチングプールは、福島県内の潮だまりの環境を再現しています。この水槽の岩組は、いわき市内の岩場から直接型をとって作成しており、さらに波動装置や干満装置を設け、潮だまりに打ち寄せる波や潮の干満も再現しています。 これにより、潮だまりの中の生物層を魚類や無脊椎動物だけではなく、海藻や海草を含め、忠実に再現することが可能になっています。
(3)潮間帯の生き物たち
1年のうち、満潮でも1回しか 海水につからないような高いとこ ろ「最満潮線」から、干潮で1回だけ 干上がる低いところ「最干潮線」ま でを「潮間帯」と呼び、潮の干満の 状態から上、中、下の3つに分けら れています。また潮間帯より高く、 海水が波しぶきとしてかかる範囲 を潮上帯と呼びます。海岸で生活 する動物たちは、潮上帯ではいう までもなく、潮間帯でも干潮時に は干上がって空気中に露出するた め、冬の寒さや夏の暑さや強い日射 とはげしい乾燥にあい、ときには 雨水をあびることもある厳しくて 変化の大きな環境で生活していま す。
潮間帯での上下の潮位差は、 太平洋岸では約2m前後ですが、 その環境差は大きく、高山の植物 のように、それぞれの環境に適応 した動物が上下に分かれて生活す る帯状分布が見られます。帯状分布 の状態を最も個体数の多い種を 代表として区別すると、次の4つ に分けることかできます。
1 潮上帯の代表種
岩の表面の小さなくぽみや割 れ目のところに、※殻高か10mm 程度の小さな巻貝が群生してい ます。これは大多数かクマキビ ガイとアラレタマキビガイです。 クマキビ類は、乾燥・温度に対 する抵抗力の大きな海産動物の 代表種です。
2 上部潮間帯の代表種
潮間帯の上部には直径が数mm で、灰白色の固い石灰質の殻に つつまれ、殻口(かっこう)に4 枚の板のふたを持ったイワフジ ツポが岩にびっしりと固着して います。
3 中部潮間帯の代表種
ここには殻の直径が20mm前 後になり、殻口がひし形のタテ ジマフジツボや、場所によって は殻口が五角形のシロスジフジ ツボが岩面をおおって固着して います。いずれもイワフジツポ より成長速度か速く、同着面に 対する競争では、イワフジツポ より優位です。フジツポ類に続 いて二枚貝のマカキが左殻で若 と相互に固着しているところも あります。
4 下部潮間帯の代表種
ここでは殻の大きさが60mm 前後になる黒色の二枚貝、ムラ サキイガイが体内から分泌した 繊維状の足糸(そくし)で岩面 や互いにからみ合って塊状にな って付着しています。この塊の 中には小型のゴカイ類、貝類、 エビ・力二類、ヒモムシ類など の動物が生息しており、潮間帯 の中でも動物の種類が一番多い ところです。
※殻高=殻の大きさ