福島県植物誌 -007/483page
係ではシラカワブシAconitum aizuense Nakai,アイヅトリカブトAconitum zuccarinii Nakai(1914) (両種とも,オクトリカブトA. subcuneatum Nakai(1914)に統合された)。飯豊山採品 を基準標本とするミヤマトリカブトAconitum nipponicum Nakai(1917),中原源治が1904年 磐梯山採集品や八ヶ岳産のものを基準標本としたホソバトリカブトAconitum senanense Nakai(1808) がある。会津東山を基準産地とするアイヅヒメアザミ(1933)Cirsium aidzuense Nakai(1937) を,尾瀬産を基準標本としてオゼヌマアザミCirsium hololepis Nakai(1930)を発表し た。矢田部・松村の飯豊山採品や早田文蔵の尾瀬平の採品などによって, ウラゲコバイケイVeratrum stamineum Maxim.var.lasiophyllum Nakai(1937)を記載した。中井はタケ科を研究 し多くの種を発表した。福島県産では,白河在住の鈴木貞次郎とその長男鈴木貞雄の採品でカワ ウチザサSasa suzukii Nakai(1935),イチノキザサSasa sadaoi Nakai(1935), カナヤマザサSasa kanayamensis Nakai(1935), ニシゴウザサSasa nishigoensis Nakai(1935), タカネザサSasa kasimontana Nakai(1935), ナカハタザサSasa confusa Nakai(1939), ヨモギダコチクArundinaria amoena Nakai(1934), ケスエコザサArundinaria kanayamaensis Nakai(1934), シラサカザサPleioblastus longifolius Nakai(1935)を記載した(これらのうち,カワウチザサ, ヨモギダコチク,ケスエコザサのほかは鈴木貞雄により,他種に統合された)。
本田正次は,磐梯山採品により,バンダイショウマAstilbe congesta(Boiss.)Nakai var.bandaica Hondaを 記載し,馬場 篤の耶麻郡北山村採品にオオツリバナEuonymus oxyphylltls Miquel var.magna Honda(1935) → E.planipes Koehne,会津産によって, ケアブラチャンParabenzoin praecox Nakai var.pubescens Honda(1936),尾瀬産によって, オゼノクロウメモドキRhamnus senanensis Koidzumi var.parvifolia Honda(1937), アオジクミヤマシシガシラStruthiopteris castanea var.viridipes Honda(1937)を命名した。
鈴木貞次郎(1887−1967)とその叔父,鈴木傳吉(後に清水と改姓)は,西白河郡表郷村金山で 採集したカヤツリグサ科の植物を福島師範学校の根本莞爾に同定を求めたが,すぐにはわからな かった。牧野富太郎は,これを新種としてScirpus pseudo-fluitans Makinoビャッコイ(1905) として発表した。これは中原源治が戸ノ口原で採集したものの中に入れて,牧野に送ったため ビャッコイの原産地にまちがいが生じた。戸ノ口原は白虎隊の激戦地である故にこの和名となっ たが,金山以外の地には産しない。鈴木は白河で,シラカワタデPersicaria amblyphylla Haraと イワキハグマPertya × suzukii Kitamura,大滝梶山で ケナシエゾノタチツボスミレViola acuminata Ledeb.var.glaberrima Hara → V.a.f.glaberrima(Hara)Kitamuraを発見した。