福島県植物誌 -011/483page
福島県の気候
渡 辺 明
福島県はKöppen(1918)の気候区分によれば,温帯多雨気候区(Cfa)に位置する。しかし,気 象要素は年によっても,あるいは,局地的な地形(標高など)によっても異なり,一部山岳地帯 は,亜寒帯多雨気候区(Dfa)や,温帯夏雨気候区(Cwa)に位置する。
こうした気候環境の基本は,太陽からの短波放射量によって決定される。太陽からの短波放射 量はその入射角,すなわち,太陽高度によって決まる。太陽高度の高い所,高い時期には,単位 面積当りに入射する短波放射量が多く,気温が高くなる。また,太陽高度が低い所,低い時期に は,単位面積当りに入射する短波放射量が少なく,気温が高くならない。従って,気温分布は,局 所的な影響がなけれは,一般に緯度に依存し,帯状分化する。
また,気温の高低は,その大気中に含み得る水蒸気量(飽和水蒸気量)を一意的に決定するた め,水蒸気の補給が困難な地域を除けば,気温と同様帯状分化する。従って,大気中の水蒸気量 に大きく依存する降水量も,時間的に長いスケールで平均化すれば,ほぼ大気中の水蒸気量分布 と同様な分布をする。しかし,局地的にみれば,降水量は水蒸気の存在量だけではなく,降水現 象が発生しやすい地域か,しにくい地域かによっても大きな差が生じるし,地形的に水蒸気量が 移流しやすい地域か,しにくい地域かによっても差が生じる。このことは,その地域の卓越風向 や海岸からの距離などにも依存する。
このように,一つ一つの気象要素は,その地域の位置や地形によって大きく変化するため,気 候環境を詳細に理解するためには,数多くの観測地点による永年にわたる観測値が必要になる。こ こでは1978年から県内29ヶ所に設置された気象庁地域気象観測システム (AMeDAS:Automated Meteorological Data Acquisition System)の毎時間の1978年から1982年までの5年間 の資料を使用し,ほぼ数十kmスケールでの福島県内の気候環境の概要を述べる。
1.気温と温量指数の分布
第1図に福島県内の平均気温分布を示す。太平洋岸,福島,郡山盆地,および,会津盆地で相 対的に高温を示し,他の相対的に標高の高い地域で低温となっている。これを福島気象台(1974) の1941年から1970年までの年平均気温の平年値の分布と比較すると,分布形態はほぼ同様であ