福島県植物誌 -015/483page
は前線,日本海,および南岸低気圧,台風などに困るところが大きい。
図6 年平均蒸発散位(実線,mm)と年平均有効雨量(破線,mm)の分布一方,第6図にThornthwaite(1948)の方法による蒸発散位の分布を示した。蒸発散量とは一 定地域における植物の生長に利用される水量と,土壌面からの蒸発量の緩和で,土壌水分が飽和 されているときの蒸発散量を蒸発散位といい,月平均気温や緯度の関数として求めたものである。 しかし,このThounthwaite(1948)の方法は気温が負の時の蒸発量が無視されていたり,その量 が年平均気温に大きく依存していたりし,必ずしも蒸発散に関する物理過程が十分配慮されたも のではない。蒸発量は基本的に,大気中の水蒸気量と地表面の水蒸気量との差,および,水蒸気 を鉛直に輸送する機構(大気の安定度,風速の鉛直分布)に依存するもので,気温が負の時も地 表面からの蒸発は起こる。また,気温が正の時でも大気中の水蒸気が地表面に吸収されることも ある。
福島県内の蒸発散位の分布は,相対的に気温の 高い,太平洋岸,福島,郡山,会津盆地で約700mm と多く,他の山岳地帯では,約600mmと少なく なっている。また,第5図の年平均降水量から,こ の蒸発散位を差し引いた値を有効雨量といい,そ の分布を第6図に示す。福島,郡山,会津盆地周 辺では,相対的に雨量も少なく,気温が高いため に蒸発散位が大きいので,有効雨量が少なく,他 の山岳地帯は,相対的に雨量も多く,気温が低い ために,蒸発散位が小さく,有効雨量は多くなっ