福島県植物誌 -020/483page
層で境されるところでは明瞭な地形上の差異を示すが,そうでないところはあまり顕著でない。常 磐丘陵や相双丘陵の東側の太平洋の陸棚域では,砂岩や泥岩を主とする第三紀層や泥や砂を主と する第四紀層が,かなりの厚さに発達している。
太平洋沿岸丘陵地域の西側に分布する阿武隈高地には,変成岩類・花崗岩類・古生層・中生層 などの先第三紀に形成された岩層が主に分布する。しかし,この高地の北部には,新第三紀前半 (中新世前期)に行われた火山活動の噴出物である玄武岩の溶岩や凝灰角礫岩を主とする地層が分 布している。阿武隈高地は全体として緩斜地の多い地形を呈しているが,双葉断層と畑川破砕帯 との間にはさまれる阿武隈高地の東緑部は,高度500〜700mの山頂部にわずかに緩斜地をのこ すだけで,河川はいちじるしい下刻を示し,谷壁は急斜し,V字谷をつくっている。また,阿武 隈高地の東緑部には,変成岩類がわずかに分布するのみで,新期の花崗岩や花崗閃緑岩が広く分 布する。このほか,古生層や中生層も分布し,北部では新第三紀の火山噴出物を主とする地層も 広く分布する特徴がある。これに対して,畑川破砕帯以西の阿武隈高地の中・北部は,主に古期 の花崗閃緑岩と新期の花崗岩からなり,変成岩やかんらん岩などが小規模に分布するのみで,古 生層や中生層の分布は知られていない。800〜1,000mの高度のところが一般だが,かんらん岩な どの分布するところはいくらか凸出した山地をつくっている。阿武隈高地の南部には,御在所式 結晶片岩や竹貫式結晶片岩・片麻岩が広く分布し,古期の花崗閃緑岩や新期の花崗岩でつらぬか れている。古期の花崗閃緑岩のなかには,4億年よりも古い年代のものが知られ,これにつらぬか れる竹貫式変成岩は先カンブリア紀の日本で最も古いものの一つではないかと考えられている。 800〜1,000mの高度を有し,緩斜地が多いが,この地域でも東綾部では河川の下刻がいちじるし く,谷壁は急斜しV字谷をつくる傾向がみられる。しかし,中・北部におけるような構造的境界 はみいだされていない。なお,地質図には示していないが,阿武隈高地中央部の滝根町付近の谷 中には,更新世末(最終氷期ごろ)の陸水成層がかなりよく発達するが,これに対比される地層 は阿武隈高地中・北部の谷部によくみいだされる。
阿武隈高地は,西方に次第に高度をさげて,中通りとよはれる阿武隈川流域の低地域にうつり かわっている。ここには,地質構造的に明瞭な境界のみられるところは少ないが,重力異常の分 布状況から盛岡〜白河構造線が,分布すると考えられている。しかし,地質の上では,双葉断層 や畑川破砕帯のように連続する大きな断層はみいだされていない。阿武隈川の低地域は,南部で 約300mの,中部では約250mの,北部では60〜100mの高度を有しているが,くわしくみると いくらか高度の低い盆地域といくらか高度の高い丘陵域との交互配列がある。盆地域としては,南