福島県植物誌 -021/483page

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から白河・郡山・福島の盆地があり,その間には矢吹〜須賀川と二本松〜松川および福島盆地北 縁の丘陵域がある。盆地域には,砂礫・砂・泥などからなる更新世中〜後期の地層が数十〜百数 十mの厚さに発達し,台地面や扇状地性の段丘面をつくっている。これらを開析して,数mの厚 さの堆積物を有する完新世の低い段丘が2〜3段つくられているところが多いが,福島盆地域では これらの面積が広く,厚さも20mをこえるところもある。一方,丘陵域には,より古い年代の地 層や岩石の分布がみられる。福島盆地北縁の丘陵域には凝灰岩や砂岩を主とする新第三紀層下部 が分布し,二本松〜松川丘陵域には竹貫式変成岩や花崗閃緑岩を基盤として,新第三紀層上部や 第四紀更新世前期の地層が分布する。新第三紀層上部は砂岩・泥岩・凝灰岩の互層状の地層から なり,更新世前期の地層は礫・砂・泥の互層状の地層と安山岩質の火砕流堆積物(地質図では新 期火山砕屑物として一括されている)とからなる。矢吹〜須賀川丘陵や白河盆地周辺の丘陵には, 更新世前期の石英安山岩質凝灰岩を主とする地層(白河層)が,下位の新第三紀上部層を不整合 におおって分布する。そして,これを開析した数段の段丘の構成層が発達している。

 阿武隈高地の南西側の棚倉〜矢祭付近には,久慈川流域の谷状の低地域がほゞ南北にのびて発 達している。この低地域の中央部には2〜3kmの幅で,丘陵もしくは丘陵状の山地が地塁状に NNW〜SSE方向にのび,低地域を東西に2分している。この地塁状の丘陵・山地には,阿武隈 高地を構成する竹貫式変成岩や古期花崗閃緑岩と八溝山地を構成する中生層の岩石などが,圧砕 された状態で複雑に入りみだれて分布する。この部分が棚倉破砕帯または棚倉構造線とよばれる もので,東西の両縁には明瞭な断層(東側のものは水平ずりを示す)が発達し,東西両側の谷部 (丘陵)に発達する新第三紀層と境されている。棚倉破砕帯は白亜紀頃につくられたが,その運動 は新第三紀に入っても行われていることを示している。棚倉破砕帯の西側には,礫岩・砂岩・泥 岩などからなる新第三紀下部層が,東側には砂岩を主とする新第三紀中部層が分布する。西方の 高度1,020mに達する八溝山地には,未変成の粘板岩や砂岩からなるジュラ紀の八溝層群が,数千 m以上の厚さで分布している。

 棚倉破砕帯は,以上にのべたことからもわかるように,阿武隈高地を構成する変成岩類や古期 の花崗閃緑岩の分布の西のへりにあたると同時に,八溝山地を構成する未変成の古期岩層の分布 の東の限界にもあたっている大きな構造帯である。棚倉破砕帯は,さらに北方にもその延長部が たしかめられている。それは,多少屈曲しながらも,NNW〜SSE方向に続いている。猪苗代湖 東岸域や檜原湖東部地域などに追跡されている。ただし,北方の地域では,棚倉付近におけるよ うに,この破砕帯の東西両線の断層は明確にはみとめられていない。


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