福島県植物誌 -022/483page

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 阿武隈川低地域の西方には,高度1,400〜1,500mに達する奥羽脊梁山脈が,ほぼ南北につら なって分布するが,さらにこの山脈をおおって那須火山帯に属する吾妻・安達太良・那須および 磐梯・猫魔などの,高度1,800〜1,900mに達する火山群が分布し,より高い山地域をつくってい る。奥羽脊梁山脈の地域には,これをおおって上にのべた諸火山の噴出物(安山岩質の溶岩・火 砕流堆積物・その他)が広い範囲に分布するが,これらの下位には脊梁山脈を構成する更新世前 期の火山噴出物(石英安山岩質凝灰岩など)や新第三紀層の下・中部層がかなり広い範囲に分布 している。新第三紀層下部は,おもに緑色凝灰岩・黒色板状泥岩・礫岩・砂岩・泥岩などの海成 層からなり,しばしば流紋岩や安山岩の溶岩をはさむ。地域によっては,新第三紀層最下部の変 朽安山岩や固結の進んだ礫岩,砂岩が分布する。新第三紀層中部は,下部にくらべて分布域がい くらかせばめられているが,灰白色凝灰岩類や砂岩からなる海成層を主としている。一部地域(大 戸岳周辺)では,灰白色凝灰岩類のほか礫岩・砂岩・泥岩からなる互層状の地層も分布する。猪 苗代湖西部から白河西方にかけては,更新世前期の石英安山岩質凝灰岩(背あぶり山層や白河層) が,新第三紀層中・下部を不整合におおって分布し,平坦な頂面を有する会津布引山や背あぶり 山などの高原状の丘陵をつくっている。一方,奥羽脊梁山脈のなかには,新第三紀層の基盤をな す古期岩層も各地に散在的に分布する。これらは,先にのべた棚倉破砕帯の北方延長部を境にし て,大きく特徴をことにしている。東側には,阿武隈高地の変成岩類や花崗閃緑岩と同系統のも のが分布するが,西側には八溝層群と同系統の大戸層などが分布する。また,新第三紀層の最下 部の地層の発達も,棚倉破砕帯の北方延長部付近より西側の地域で顕著である傾向がみられる。

 奥羽脊梁山脈のなかには,猪苗代湖をかかえる地溝状の猪苗代盆地が発達する。猪苗代盆地の 北部には磐梯火山が分布し,東縁は明瞭な断層崖を有する川桁断層で境されるなど,きわだった 地形的特徴を有している。また,裏磐梯と称される磐梯火山の北側には,明治21年の大爆発のと きに生じた火砕流により岩屑物が多量に集積し,檜原湖をはじめとする湖沼群をつくっている。表 磐梯と称される磐梯火山の南側には,猪苗代湖に接する湖岸平野がかなり広い範囲に発達する。こ の平野の下には,砂礫を主とする完新世の地層と砂や泥を主とする更新世後期の地層が,数十〜百 mほど発達している。また,猪苗代湖の北西部の翁島付近一帯には,磐梯火山からもたらされた と推測される,火山泥流(火山砕屑流)が丘陵をつくっている。

 奥羽脊梁山脈の西側には,南北に細長い地溝性の会津盆地とその南方延長上に小規模な田島盆 地とが分布している。もっとも,会津盆地と田島盆地との間は,かなり高い山地でへだてられて いる。会津盆地は南北30kmの長さの,東西約10kmの幅の盆地で,200m内外の高度を有する


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