福島県植物誌 -037/483page

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うになる。吉岡(1956)によれば,アカガシ林は平野部に,そして阿武隈山地の河谷沿いにウラ ジロガシ林が分布するという。また,シラカシは他の2種のカシ類よりもさらに内陸部に侵入し ている。表3にアカガシ林の組成の例を挙げる。カシ類やヤブツバキ,ヒサカキなどは,いずれ も前述のスダジイ林における暖帯の要素の一部が抜け出して北に及んだものである。

 なお,県指定天然記念物「大聖寺のアカガシ樹群」(浪江町大字北幾世橋字北原6,昭和50年5 月30日指定)は,これらカシ林のうちの唯一の行政的保護の対象である。

3)中間温帯林

 福島県における中間温帯では,冬季の冷え込みが多少とも少ないような地形の所では局地的に シラカシが優占群落を形成することがある。しかし,このような森林は気候的極相とはいえず,む しろ地形的極相のカテゴリーに入る。気候的極相がどのような森林なのかは,それが残存するは ずの緩傾斜地における人為の影響が大きく,簡単に結論を出すことはできない。現在までの調査 研究によれは(樫村 1974,1980,1984),それはコナラ林である。このコナラ林帯の広がりはカシ の分布域を超えてブナ分布域まで及び,標高700〜800mで気候的極相の座をブナ林にゆずるも のと考えられる。従来の呼び名を尊重すれば,標高400〜500mまでのカシ分布域のコナラ自然林 が暖帯落葉広葉樹林に当り,また,それより上部でブナの分布域にくい込んだかたちのものが中 間温帯林ということになるのであろうが,両者の組成にはさほどの差はないと思われる。

表4 猪苗代湖周辺のコナラ林の組成(樫村 1980より改変)
林床型 I II III IV
林分
 

I



I



II
 

 
I

 

I

 

II



I



II



I

 

III

 

IV



I

 

I

 

I



I



II

 

I
高木層                                  
 ケヤキ 1
 ホウノキ 2 1 1
 ク リ 2 1 1 3 1 3
 ミズナラ 1 4 1 2 2 2
 カスミザクラ 2 1 1 2 1 2 1 2
 コナラ 4 4 3 4 4 3 5 5 5 4 5 3 5 4 4 3 3
亜高木層                                  
 ツリバナ 3 3 1 1 2 3


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