福島県植物誌 -041/483page
ザサが優占する)。
なお,上記の諸型はブナ林の低木層の種組成の特徴によって類型化されたものであるが,同様 にして草本層の種組成によって類型化を行うこともできる。低木層による諸型が,前記のように, ブナ林立地の地域性を示すのに対し,草本層による諸型は立地の地形的特徴を反映する。主な型 を挙げると,イワウチワ型(ゆるい尾根すじ),ヒメモチ型(斜面中部),ヒメアオキ型(斜面下 部),オクノカンスゲ型(斜面下部の崖錐性岩角地)などになる。ただし,これらの諸型はすべて チシマザサ型とユキツバキ型のブナ林についてのものであり,スズダケ型のブナ林については,こ うした分析を行うのに耐えるほど多岐にわたる林分は,残念ながら残されていない。このことは, 私有の林地はともかくとして,国有林野の森林計画の作成に当っては,少なくとも地域自然の指 標となる自然林分の保護も含めて計画されるべきではなかったかと悔まれるゆえんでもある。
5)亜高山帯針葉樹林
福島県域の山岳における亜高山帯の下限は標高およそ1,500mにある。代表的な気候的極相は アオモリトドマツ林であるが,その主な広がりは吾妻山塊と尾瀬の燧ヶ岳を巡る一帯にある。飯
尾瀬燧ヶ岳,標高1,840m,斜面の向き W-20°-N,傾斜21°。
表6 アオモリトドマツ林の組成 高木層(20m) アオモリトドマツ 4 コメツガ 2 ダケカンバ 1 ネコシデ 1 亜高木層(6m) オガラバナ 1 アオモリトドマツ 1 コメツガ + テツカユデ + 低木層(2m) チシマザサ 4 ハリブキ 3 アオモリトドマツ 1 ミネカエデ 1 コヨウラクツツジ 1 コメツガ + 草本層(0.3m) ゴヨウイチゴ 2 ヤマソテツ 2 ユキザサ 1 シノブカグマ 1 ナナカマド + アオモリトドマツ + コミヤマカタバミ + タケシマラン + ネコシデ +