福島県植物誌 -043/483page

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ツによく似ているが,葉の色が青味がかっており,黄味がかったアオモリトドマツとはスカイラ インを走るバスの車窓からでも容易に区別がつく。

 亜高山帯の森林は厳しい自然環境下にようやく成立したものであり,恐らく多くの年月を要し て相互扶助型の共同体を形成したものである。林冠を形成している1本が枯死すると,それが引 き金となって林分全体に枯死が及ぶことがある。そのしくみは,林内への通風による乾燥死,或 いは林床への陽光の入射による春先の一時的な温度上昇が凍霜害をまねくためと考えられている (樫村ほか 1974b,樫村ほか 1977)。かつて亜高山帯に観光用のドライブウェイを作敷することが あちこちで行われたが,自然のなりたちを考えない荒っぽい人為は沿線の多くのアオモリトドマ ツの立ち枯れをまねき,世論の厳しい批判を受けた。うっそうとした亜高山帯森林の存在は,山 の雪を春おそくまで保存し,水源かん養の意義も大きい。

III 主な地形・土壌的極相林

1)はじめに

 以上にのべて来た気候的極相林に対し,そのカテゴリーにぴたりとはまって解訳することので ない自然林分の残存も多い。その多くは尾根すじとか急傾斜地,或いは土壌母材の運積が盛んな 低凹地など,明確に地形的・土壌的特徴をもった立地に成立している。そのため,気候的極相林 のほかに,立地の地形的・土壌的特徴を反映した多くの森林型があると考えられている。しかし, その内容は極めて多岐にわたり,それらすべての成立過程が解明されているとはいえない。今後 の究明が期待されるところである。また,地形的・土壌的極相は,気候的極相と違って,必ずし も森林のかたちをとらず,低木林や草本群落の場合もある。以下には,福島県域にみられ,森林 の範疇に入る主なものについて解説する。

2)アカマツ林

 アカマツの自然林は,第三紀層やカコウ岩でできたあまり高くない山地の尾根すじに成立する。 また,砂礫質の沖積地にもよく現われる。概して土壌の粒径が粗く,通気性や透水性が良好で,溶 脱の進んだ貧栄養の土壌の立地に成林する。

 この種のアカマツ林は,前述の気候的極相に比べて保存状況は良好であり,優良な林分があち こちに残存する。林床の植生によってヤマツツジ型とツタウルシ型の2型が識別される。前者は 尾根すじに多く,後者は沖積地にふつうである。阿武隈山地北部の日山の一帯には「津島松」と


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