福島県植物誌 -051/483page
が多い。IV 森林以外の自然植生
1) はじめに
わが国のような多雨気候のもとでは気候的極相は森林になるし,前述のように,地形・土壌的 極相も森林のかたちをとることが多い。しかし,地形・土壌的に非常に特徴的な立地になると森 林以外のさまざまの自然植生もみられる。以下に,福島県域に出現する主なものについてのべる。
2)砂丘植生
川が運んで来た砂は,川が海に注ぐ所で堆積する。隆起性の海岸では,そこに広大な浅くて平 坦な海底地形が形成される。それが干潮のときに水面の上に現れ,表面の砂が風で陸の方に運ば れる。そして風の力をそぐものがあるとそこに堆積する。風の力をそぐ障害物がただの物であれ ば,その物は砂に埋もれてしまうだけであるが, 或る種の植物は,砂に埋もれるとすぐに垂直に 地下茎をのばして砂の上に出る。そうするとそ こにまた砂がたまる。こうして,植物と飛砂の いたちごっこで砂丘が発達して行く。このよう な砂丘をつくる植物群を砂丘植生という。
図21 新舞子浜(いわき市四ッ倉町)
砂浜上の植物はケカモノハシ,ハマニガナ,ハ マヒルガオなど。海岸堤防や観光道路の構築に より,このような自然海岸はかなり縮少されて いる。福島県で砂丘のよく発達しているのはいわき 市の夏井川の河口を中心として広がる新舞子浜 である。ここでは,図17に概念的に示したよう に,汀に近い最前線にはコウボウムギやハマニ ンニクがつくる未発達の小さな砂丘があり,そ