福島県植物誌 -052/483page

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の後方に,ハマヒルガオ,ハマエンドウ,ハマニガナなどが成育するやや大きな砂丘がみられる。 そして,その後方には,いまはクロマツの植栽林で被われてすっかり安定している古い砂丘があ る。

 前の方の砂丘は供給される飛砂の畳も多いが,風衝面は風でけずられ,砂は後方に堆積する。そ のため砂丘は後方に移動しながら発達して行くことになる。このような砂丘を移動砂丘という。し かし新舞子浜の場合は砂浜の巾そのものが数百メートルに過ぎず,こうした砂丘の発達はあまり 明確ではない。ことに近年においては海岸堤防や観光道路ができて砂の移動が妨げられ,砂丘は 衰退し,植生も急速な内陸化がめだち,白砂青松の美しさが失われつつあるのは淋しい。

3)湿原植生

 地形的に低く排水のよくない所は,泥炭層の発達の程度により成立する植生の型が異なる。泥 炭層は粗腐植が堆積してできるもので,土壌微生物のはたらきをおさえる低温,貧栄養,低通気 性の条件で発達する。気温の低い高緯度地方あるいは高標高の地で泥炭層の発達は概して良好で ある。また,川岸の低湿地のように水の更新のよい所では,低温の環境でも泥炭層は発達しない。 また,平坦面の広い低湿地では水は限られた所を流れ,平坦部の多くは降水でうるおされる。こ のような所では,しばしば厚い泥炭層の発達がみられる。なお,泥炭層の発達には永い年月を要 するため,泥炭層の発達は過去の気候条件に支配されるものであり,現時点での気候条件では説 明できない例もしばしばみられる。

 低湿地植生の型は大別してヨシ沼沢,低層湿原,及び高層湿原の三つになる。ヨシ沼沢は川べ りや湖の岸近くにみられるもので,みるべき泥炭層の発達がない。泥炭層が堆積している低湿地 については,その厚さにより低層湿原と高層湿原に分けられる。低層湿原は泥炭層がうすく,湿 原表面は地下水位を出ず,富栄養の地下水の影響下にある。これに対し,泥炭層が凸レンズ状に 厚く堆積し,湿原中央部は地下水位を出て降水だけでうるおされる湿原を高層湿原という。高層 湿原の表層は貧栄養・酸性である。

 イ) ヨシ沼沢

 水辺の一般的な植生であり,地下水位によって種類構成が異なり,優占種の帯状分布が明らか である。ヨシ沼沢の優占種は生活形でいえは通水植物であり,水位の高い沖の方から順に,フト イ・サンカクイ帯,マコモ・ガマ帯,ヨシ帯,アゼスゲ帯となる。アゼスゲ帯の先はヤナギ類の 林縁植生を経てハンノキ林へと続く。種類構成は後述する低層湿原や高層湿原にくらべてかなり


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