福島県植物誌 -058/483page

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ンバイなど大型の多年草の群落となる。

 雪田植生のとくに見事な山は,当然のことな がら,福島県西部山地の高山である。飯豊山,浅 草岳,会津駒ヶ岳など特筆すべきものがある。飯 豊本山から御西岳にかけての主稜線の東側には みごとな雪田植生の広がりをみる。しかし,カ コウ岩の尾根は広く浸食を受け,そこを吹き越 す西風は強く,飯豊山の高山植生の本領は,む しろこの広い尾根に発達した風衝地群落にある といえる。

図28 会津駒ヶ岳の雪田(南会津郡桧枝岐村)
図28 会津駒ヶ岳の雪田(南会津郡桧枝岐村)
ミヤマキンポウゲが花盛りである。手前の丸い 葉はイワイチョウ。

6)火山植生

 福島県には今なお活発に活動する硫気孔を持つ火山が多い。火山活動はさまざまのかたちで植 生に影響する。磐梯山北部にみるような,爆裂による植生の直接的破壊もその一つであるが,長 く植生形成に支配的影響を残すものとしては,浅部の温泉作用による表土の変質があげられる。温 泉作用を受けた土壌は白っぽく,硫黄分の多い無機酸栄養型となる。この影響を受けて,そこに 成立する植生は高山植生に似た特殊なものとなる。代表的なものは,コメススキ,メイゲツソウ, ススキ等を主とし,ミネヤナギ,マルバシモツケ等若干の低木を加えた低群度の草本植生である。

 こうした火山植生は,火山活動が収まると本来の自然植生へ向かって変化をして行くはずであ る。しかし,このような回復遷移の進行は,その地の立地条件に強く影響される。そして多くの 場合,風衝とか,積雪とか,表土の移動浸食などの影響を受け,さまざまの段階にとどまってい る。その主たる型は,東斜面の積雪地にみられるキタゴヨウ,ハクサンシャクナゲ,クロマメノ キ,アカミノイヌツゲなどを主とする低木群落であり,また風衝地にみられるガンコウラン,ミ ネズオウなどの矮小低木群落である。

 火山植生の代表的なものは,吾妻山の浄土平一帯と,安達太良山の沼の平を中心とした一帯に みられる。磐梯山北部の植生については,爆裂による直接破壊と土壌変質とが混在しており,ま た,アカマツ造林等,その後の人為も加わって複雑な様相をみせている。ただ特記すべきことと しては,磐梯山の火山性の余水を受けた五色沼の湖群の湖底に広がるウカミカマゴケ,ホソバウ マスギゴケ,フトヒルムシロ等の群落の発達がある。


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