福島県植物誌 -060/483page
図29 一切経山南面の火山植生
メイゲツソウが大群落をつくっている。手前の 裸地にはコメススキの小さな株が散生してい る。遠くの峯はらくだとしもふり。
図30 白河高原における植物群落の遷移(樫村 1976より)強い競争力をもつものは消滅し,乾燥,貧栄養に強い植物が勢力を伸ばして行った。その代表的 なものがアカマツとコナラである。このうち,とくに乾燥,貧栄養に強く,土壌の通気性のよい 所を好むアカマツは,尾根を中心に分布を広げ,その他の場所を広くコナラが占めるようになっ た。現在我々が山野にみる樹林の多くは,このような経緯をもつ半自然植生である。
これらの樹林は,放置すれはもとの自然林に帰って行くものと考えられる。また自然林との区 別は,具体的には,優占種の幹径の大きさ,個体分布の集中性,林床植生の地形的分化等をめや すとして行っている。しかし,より科学的方法が追求されるべきものであることは論をまたない。
コナラとアカマツは,上記の薪炭林経営のような人為により,気候的にも地形的にもその分布 域を広げて行った。しかし,その北の限界は温帯南部までであり,また上限は,福島県の場合,標 高およそ600mまでである。それより上部は本来ブナ林の世界であるが,このブナ林についても 薪炭林経営がなされ,ここではブナはミズナラにおきかえられて行った。山地帯上部にみられる 若令のミズナラ林は,こうしてできた二次林である。
亜高山帯については,昔はアプローチが難しかったうえに,有用の樹種も少なく,ほとんど人 手は及んでいない。しかし,硫黄鉱山の近くでアオモリトドマツ林に対して薪炭林経営が行われ た例が若干あり,この場合はアオモリトドマツはダケカンバにおきかえられている。吾妻山浄土 平の奥に,その顕著な例が認められる。亜高山帯の森林は,厳しい気候条件下にようやく成立し たものであり,僅かの人為破壊が大巾の自壊作用を引き起こす例も多く,その開発には十分の注 意が必要である。
自然に対する人為のもう一つは,馬産のための草地経営である。馬といえば,今ではレジャー