福島県植物誌 -069/483page

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チシマザサ線

 チシマザサ節Macrochlamysはチマキザサ節と同じく北方および日本海側型の植物である が、東北地方ではミヤコザサ線をはるかに東に越え、太平洋海岸に達している。 しかし福島県以南では急に内陸に後退し、福島県と栃木県で はミヤコザサ線よりわずかに東へひろがるだけである。群馬県以西ではミヤコザサ線より 日本海側にさらに後退し、そのまま西進して鳥取県の大山に終る(図35)。 チシマザサ節はタケノコがおいしいことで有名で、福島県では土湯温泉 をはじめ会津地方の諸所で珍重な物産とされている。

図35

スズダケ線

 ササ属に形態がきわめてよく似たものにスズダケ属Sasamorphaがある。ササ属は稈が斜上 し、基部が多少なりと湾曲する。地下茎は通常1年で先が止まり、翌年はそれから 新しい地下茎が側生し、仮軸分岐をする。稈鞘は節間より短く、そのため各節間 の上部が露出する。それに対してスズダケ属は稈が直立し、地下茎は毎年主軸が伸長し、 単軸分岐をする。稈鞘は節間より長く、そのため若い稈では稈面が露出しない。
 スズダケ属はササ属のミヤコザサ節と同じく太平洋側に分布の中心があるが、 その分布域はミヤコザサ線よりもっと内陸にひろがり、その縁辺は年最高積雪の極の 平均値75cmの等深線とほぼ一致し、チマキザサ節の葉の隈どりの限界線とほとんど 同じである(図35)。


ブナ林とササ類

 ブナは世界の北半球温帯に生える生態学的に、また経済的にきわめて重要な樹木である。 日本のブナ林は林床にササがあることが大きな特徴であるとされている。 ところが上述のようにササは太平洋側と日本海側とで種類が全く異たり、 植生の上で太平洋側のブナ林はスズダケ―ブナ群団、日本海側のブナ林はチシマザサ― ブナ群団と、日本のブナ林は大きく2つに区分される。そ


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