福島県植物誌 -071/483page
福島県の関東地域
上述のように中通り以東は植物区系上関東地域に属し、そこにはオオモミジガサと タカクマヒキオコシがあり、それらは襲速紀要素とされ、フオッサマグナが起きる 以前にすでに関東地域に侵入していたと言われ、ともに福島県が北限地である。 関東地域の襲速紀要素にはほかにテバコモミジガサとギソバイソウがあるが、 それらは福島県になく、前者は秩父山地、群馬県、後者は茨城、栃木、群馬の北関東で 止まっている。
関東地域の著しい植物のうち福島県にはシバヤナギ、シライヤナギ、アブラチャン、 オオイトスゲ、ミミガタテンナンショウ、ヒトツバテンナンショウ、イワギボウシなど がある。またオヤリハグマもあるが、それはやや北方系で、県内にやや普通に見られ、 会津地方にもまれにある。南は久慈山地に、北は東北地方まで伸びている。 しかしこの地域の代表植物であるほかのジゾウカンバ、チチブミネバリ、 カントウカンアオイ、ランヨウアオイ、コウシンソウ、ヒイラギソウな どは福島県までは北上していない。
関東地方を本場とし、それより中部日本へ分布域がひろがったと思われている植物と してカラマツ、タマアジサイ、タイアザミ(トネアザミ)があげられるが、 そのうちカラマツは日光の高山を伝わり尾瀬にはいり込んでいる。 カラマツの自生地は福島県では尾瀬だけである。それはさ らに北上して宮城県蔵王山まで伸びて止まり、そこが北限地である。 タマアジサイは中通り以東には普通に見られるが、会津地方には少ない。 タイアザミは全県下にあるが、ややまれである。
福島県の日本海地域
会津地方は植物区系上、日本海地域にはいることは前に述べた。 前川文夫(1977)によると、日本海地域の植物は構成植物によってだいたい4つの型に 区別できるという。ここではおおむねそれに基づいて述べることにする。
1. トガクシショウマ型 この型のものは日本の代表的な遺存的固有属か、またはそれに準 ずる群で、しかもこの地域の中部から北部にかけて集中して分布しているという。 トガクシショウマ、サンカヨウ、シラネアオイ、オオバツツジ、タヌキラン、 キヌガサソウなどがその例である。いずれも会津地方に産するが、タヌキランは 中通りの郡山市や西白河郡に、さらに栃木県の諸所にまで分布域をひろめている。
2. スミレサイシソ型 この群のものは太平洋側に対応種をもつもので、第1型よりは時代 的にはるかに若い。ササ属の生態でも述べたように、会津にササ属のチシマザサ節と チマキザサ