福島県植物誌 -072/483page
節があり、それに対して中通り以東ではスズダケ属とササ属のミヤコザサ節があって、 はっきりした住みわけをしている。チマキザサ節とミヤコザサ節、 またチシマザサ節とスズダケ属はそれぞれ日本海地域と太平洋地域の対照的な植物と 言えるであろう。
会津にはスミレサイシン(葉は円心形)があり、それに対して中通り以東(以下、東方とする) にはナガバノスミレサイシン(葉は3角状広披針形)がある。また会津にユキグニミツバツツジ (葉柄や花柱に毛がない)があり、東方にトウゴクミツバツツジ(葉柄に長毛が密生し、 花柱に腺毛がある)が多い。会津にコシジシモツケ(托葉に耳部があり、葉は頂小葉だけか、 またはその下部につく側小葉の数が少ない)があり、東方にアカバナシモツケ(托葉に耳部が なく、葉の側小葉の数が多い)がある。しかし後者の母種、シモツケソウ(果実に縁毛がない) は箱根あたりで止まり、福島県にはない。会津にエチゴキジムシロ(小葉は5個で、 上端の3個は大きく、下部の1対は葉柄の上部につき、ときに消失する)があり、 東方にキジムシロ(小葉は5〜9個で、下部のものはしだいに小さくなる)がある。 会津にナニワズ(葉は楔状狭倒卵形、円頭または凹頭、幅2〜3cm)、東方にオニシバリ (葉は倒披針形、やや鋭頭、幅1〜2cm)、会津にミチノクエンゴサク(花は小さく、 長さ10〜13mm)、東方にヤマエンゴサク(花は大きく、長さ15〜25mm)、会津に オオヒゲナガカリヤスモドキ(芒の発達がわるく、花序の枝が多く、6〜10個、葉の幅1〜2 cm)、東方にカリヤスモドキ(芒がよく発達し、花序の枝は少なく、2〜5個、葉の幅8〜12mm)、 会津にミヤマアブラススキ(葉は長さ20cm以内、枝の花軸の関節1〜2個で小穂は3〜5個)、東 方にオオアブラススキ(葉は長さ25〜40cm、枝の花軸の関節3〜5個、小穂7〜11個)がある。 また種内の分化によって区系地域を異にしているものには、会津にオクチョウジザクラ(変種、 葉の毛が少なく、鋸歯が鋭い)、東方にその母種、チョウジザクラ(葉は毛が多く、鋸歯が鈍い), 会津にマルバマンサク(変種、葉は上半部が半円彬で円頭か、またはやや凹頭)、 東方にその母種、マンサク(葉は上半部が3角形でやや鈍頭)、会津にタイリンヤマハッカ (変種、花は大きく、長さ12〜13mm)、東方にその母種、カメバヒキオコシ(花はやや小さく、 長さ8〜12mm)、会津にキタコブシ(変種、葉と花がやや大きい)、東方に母種、コブシ(葉と 花がやや小さい)があり、それらの種の段階では会津にタムシバ(葉は広披針形または 卵状長楕円形、鋭頭、下面は帯粉白色)、東方にコブシ(葉は倒卵形で先は急に尖がり、 下面は淡緑色)があって対照的であるが、前川はタムシバを次の第3型に当てている。
なお日本海地域には太平洋側の花が黄色いキバナアキギリに対して花が紫のアキギ リがあり、また太平洋側の葉が夏緑性のイカリソウに対して常緑のトキワイカリソウ などがあるがそれら