福島県植物誌 -073/483page

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は会津には産しない。キバナアキギリとイカリソウは県内に普通である。 そうかと思うと、それらとは反対に、会津に日本海地域型のヤチダモ (葉柄の基部がすこし膨大し、葉の中軸と花序に赤褐色の綿毛がある)があるが、 それと対照的な太平洋側型のシオジ(葉柄の基部が著しく膨大し、 葉の中軸と花序は無毛)があるが、それは関東地方北部で止まり、福島県に達しない。 同様に会津にカラスシキミ(がく筒の外面は無毛)があるが、太平洋側型のコショウノキ (がく筒の外面に毛がある)は千葉県が北隈である。また会津にヒメサユリ(花被片の 長さ5〜7cm、外片と内片はほぼ同幅、約は黄色)があるが、ササユリ (花被片の長さ10〜13cm、外片は内片より著しく幅が狭く、約は濃褐色)は 中部地方までで、福島県にはない。

3. チョウジギク型  前川によると、この群ははなはだ奇異な分布を示すもので、 本州中部以北では日本海側全域に展開しながら太平洋側には分布せず、 さらに西日本では日本海側にも、また太平洋側にも分布し、種類によっては屋久島に まで広がっているという。そしてその例として、アスナロ、ナラガシワ、 タムシバ、クロヅル、ウシカバ、アクシバ、クノルマバハグマ、チョウジ ギクなどがあげられている。
 それらについて福島県内の分布を述べてみよう。まずアスナロはその変種、 ヒノキアスナロとともに会津にやや普通に見られるが、 中通り以東にはない。ナラガシワは会津と中通りの福島市などにまれにある。 タムシバとチョウジギクは会津地方に隈られているが、クロヅルは福島県で も関東地方北部でもいくらか関東地域に侵出している。アクシバは全県下にやや普通にあり、 さらにクルマバハグマは会津と中通りにやや普通、浜通りにはごくまれである。 ウシカバは福島県に産しないが、その変種、アカミノイヌツゲは会津の高地に普通である。

4.ハイイヌツゲ型  この型の植物は深雪のため、おもに枝が押し倒されて伏臥し、 しぼしぼ不定根がでて株立ちになるという程度の軽微な変種段階の分化を起こした群である。 第2型と同様、変異しない正型が太平洋側にあることが多い。キャラボク、チャボガヤ、 ハイイヌガヤ、エゾユズリハ、ヒメモチ、ツルシキミ、ユキツバキなどがその例で、 いずれも会津にある。
 それぞれの対照植物はイチイ、カヤ、イヌガヤ、イヌツゲ、ユズリハ、モチノキ、 ミヤマシキミ、ヤブツバキで、イチイのほかは中通り以東にある。イチイは県内では 会津にごくまれにあるだけである。ユキツバキは枝や葉だけでなく、花部にまで変異が おきている。
 以上のように福島県は西側が日本海地域に、東側は関東地域に県のほぼ中央で切半され、 たがいに区系を異にしている。そのほか西側には燧ケ岳(2,346m)、駒ケ岳(2,132m)、 飯豊山(2,105m)、帝釈山(2,060m)、吾妻山(2,024m)など、標高2,000m級の山があり、 それらの生態学上


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