福島県水産試験場研究報告 第10号 - 003/073page
一般に土壌の分析法として、士を乾燥させ、径の異なるフルイにかけて飾い分け、粒度組成を見る方法が行われる。我々が用いたフルイの径は、0.074〜2.000mmまでのもの(0.074、0.105、0.250、0.420、0.840、2.000mmの6種)で、フルイ振とう機でフルイ分け、各フルイに残った重さを計測する。これから、X軸に対数目盛で粒径(mm)を、Y軸は各径別フルイの通過質量百分率(%)をとって表すと、粒径加積曲線が得られる。この粒径加積曲線は、底質の性状を良く表している。特に、海底の底質を出来るだけそのままの状態で採取して、粒度試験を行うことは、その海底における海水の流動、もしくは、波浪・海流などの、長い年月にわたる積算値の表現をかいま見るといえよう。
1987年(昭和62年)5月21日に特定し得た、イシカワシラウオの産卵場について、追跡調査を実施した。6月6日には、産卵場の広がりを見るために、卵採集地点を中心として、約300m四方ぐらいの範囲を、無作為に底質をサンプリングして、採集卵数を計測するとともに、底質の粒度試験も行った。
驚くかな、一見、外観は同じように見えた底質が、卵が多数採取出来た地点(数百〜数千個)の底質の粒径加積曲線は、非常に特徴的で、卵が殆ど採集出来なかった地点(0ないし1〜2個程度)とは、はっきり区別出来るほど異なっていた(図−2)。
産卵床は、貝殻片などを含んだきれいな粗砂で、粒径は0.425〜0.850mmが主体で(底質の約70〜80%を占める)、中央粒径値は、0.56mmであった。
イシカワシラウオの受精卵の卵径は、約1mmである。一方、産卵場の底質の粒度組成は、中央粒径値が0.56mmと、卵径の約1/2強の径にある粗砂で、しかも、イシカワシラウオの受精卵は、反転した外卵膜の粘着により、しっかりとこの粗砂を、1個ないし数個抱いていたことは興味深い。
産卵場は、漁船でさえも近寄りがたい、波浪の激しい岩礁域内にあった。こんな所だから