福島県水産試験場研究報告 第10号 - 004/073page
こそ泥分や細砂は流されて、それらを含まない、特定の粒径を持つ粗砂のみが集められたのだろう。
そしてこの粗砂を抱いた、イシカワシラウオの授精卵は、流されることもなく、また、波浪に揉まれながら、水の流動ならびにそれによる、充分な溶存酸素のある環境の中で、艀化までの時間を過ごしていたことが、容易に想像できた。
筆者はこのとき、1982年(昭和57年)秋、内水面水産試験場にいて、会津地方の、檜原湖に流入する大川入川という川の上流で、イワナの産卵場探し1)をしたことを思いだしていた。調査に入ったのは、11月も末で、桧原の山奥は、すっかり木々の葉が落ちて、まもなく雪を迎えて、長い冬に入ろうとしていた。ずいぶんと探したが、本流筋では見つけられず、支流をさかのぼって、源流に近づいたところで、ようやく見つけたときの感激は、まだ、脳裏に新しい。
イワナの産卵場は急流の中にあって、その箇所だけはきれいな細礫が堆積していた。そこを4〜5cm手で掘ると、魚卵が約100粒ほどだったかと思うが埋まっていた(卵は沈性であるが粘着ではない)。その箇所には、シルト分や泥分はなく、また、急流の中であっても、卵が流れ去るようなこともなく、よく見ると、伏流水がわき出しているような所という感じであった。一度、その産卵床を観察したあとは、楽に次々と、10箇所ぐらいの産卵床を確認することが出来た。いずれも同じ様な環境条件にあったことが、不思議だったり、感心したりしたものだった。
イワナとイシカワシラウオの産卵床を、一緒には出来ないが、両方に共通しているのは、シルトや泥分のない砂礫に覆われていること、そして、伏流水または波浪などにより、常に新しい水が補給されるような環境にあることと言えよう。ただし、イワナは自分で産卵床を造成し、産卵後に埋め戻しているが、イシカワシラウオは、自分では造成できないため、そうした環境を探し出して産卵し、反転した外卵膜により、砂粒を抱くことによって、そうした環境に卵を維持しているところが、違うと言えよう。
図−2 産卵場底質の粒径加積曲線採集した天然卵の発生状況
5月21日の調査で特定し得た、小良ケ浜前のイシカワシラウオ産卵場について、6月6日,6月16日,6月24日の3回にわたり、追跡調査を実施した。
この時、採集した天然のイシカワシラウオ受精卵は、6月6目が10地点の採泥で約8,000粒、6月16日は3地点の採泥で113粒、6月24目が5地点の採泥で37粒であった。これらの卵の発生状況を(表−1)に示した。
採集卵の発生状況は、卵の受精後の時間経過を示すもので、大きく分けて3群に分けられた。第一群は、受精後間もないと思われるもので、胚体がまだ形成されず、胚盤のみが形成されているものであり(写真−2)、第二の群は形成された胚体が、胚盤上を3/4周〜1周しているものである(写真−5)。この群は、眼胞は形成されているものの発眼卵とはなっていない。そして、第3群のそれは、胚体が1周と1/