福島県水産試験場研究報告 第10号 - 005/073page
2周ないし2周しているもので、眼の黒い発眼卵であり、艀化直前の群と考えられた(写真−6)。いずれの卵も、反転した外卵膜により、貝殻片や砂利等にしっかりと付着していた。
6月6日には、8,000粒に及ぶ卵が採集されたが、採集卵の分布状況から見て、産卵場の広がりは、100m四方前後のごく狭い範囲と目された。
写真−5 胚体が3/4周〜1周
写真−6 胚体が1周と1/2周ないし2周また、注目すべきは、6月6目の調査で、1地点から6,000粒以上の卵が採集されたが、この卵の大部分(約9割)は、胚盤が形成されてはいるが、胚体はまだ形成されていない受精卵で、産卵後間もないものであったことにより、6月に入ってもまだ、産卵盛期にあったことと推察された。
なお、同年7月6日、人工授精を試みるために、同産卵場において、刺し網(2張り、刺し網の敷設時間は約2時間)により、産卵親魚を採捕した。採捕した親魚は、合計119尾(雄62尾,雌57尾)を採捕したが、雄の尻鰭鱗の吸着性により、網目や手に粘り着き、7月になってもまだ、産卵が行われていたことを物語っていた。小雪舞う、寒い時期から始まった産卵場調査も、7月6日は、暑い夏の日射しが照りつけ、吹き出る汗を拭いながら、親魚を網目からはずした記憶が、まだ脳裏に焼き付いている。
人工授精の試み
7月6日に持ち帰った親魚から、搾出法により、人工授精を試みた(7月6日の15時、シャーレ上で人工授精、水温17.8℃)。