福島県水産試験場研究報告 第10号 - 006/073page

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 2時間後には、胚盤が形成されており、8時間後には、卵割が進み、外卵膜がきれいに反転しているのが観察された(写真−7)。5日後の7月10日には、胚体の形成(約3/4周していた)が確認されたが、これ以後、水生菌の発生で死滅した。

 このことからも、天然の産卵床が、波浪の激しい岩礁域内の粗砂や礫の中にあり、激しい水の流動の中にあることが、卵をこうした水生菌などから守っているものだということ、逆に、そのような環境でないと、生き残れないのであろう、ということを思いめぐらせた。

シャーレ内で反転した外卵膜
写真−7 シャーレ内で反転した外卵膜

 孵化直後の仔魚

 産卵場調査の折りに、採集した底質試料の一部をホルマリン固定せずに、実験室に持ち帰った。この中から、胚体が1周と1/2周ないし2周している、艀化直前の卵を拾い集め、流水中で飼育して、多数の孵化仔魚を得ることができた。また、採取した底質中にも、孵化仔魚が数尾散見されていた。

 孵化直前の眼の黒い発眼卵は、卵内で、盛んに回転しながら動き回る様子が観察された。6月18日、10℃の水槽中にセットした、5個の孵化直前卵は、翌日すべて正常に孵化している。

 孵化直後の仔魚は、全長4.4mmで、尾部基底に2個の黒色胞が明瞭に見られた(写真−8)。この2個の黒色胞は、イシカワシラウオ仔稚魚に見られる特徴である。

 これらの孵化仔魚を、水温約15℃の流水中で飼育したところ、約10目から14日で卵黄がほぼ吸収され、全長は6.3mmに達した(写真−9)。

 孵化後、卵黄が吸収されたのが、10日から14日であり、その間に、全長が4.4mmから6.3mmに変化したことは興味深い。
このイシカワシラウオ調査を、私が担当したのは、昭和59年度〜昭和62年度までの4年間であり、昭和59年度には、稚仔魚期の採集をねらって、5月期と6月期の調査を実施している。採集方法が難しかったが、検討を重ねながら、丸稚ネットとビームトロール網による採捕を併用した。

 1984年(昭和59年)5月9目と、6月16

孵化直後のイシカワシラウオ仔魚
写真−8 孵化直後のイシカワシラウオ仔魚
卵黄がほぼ吸収された仔魚
写真−9 卵黄がほぼ吸収された仔魚

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