福島県水産試験場研究報告 第10号 - 025/073page

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度が高いのは沖底であると考えられ、沖底で見る限り、特に太平洋北区においては、1975年以降漁労体数の減少傾向は鈍い。この間、漁労機器の発達等により1隻あたりの漁獲努力量は数倍になっている2)との意見もあり、この間の漁獲努力量は実質増加傾向にあったのではないかとも思われる。

 主要魚種の資源動向と漁場利用の推移

 当県の沖底・小底とも、1955〜1999年の間に漁獲対象魚種の変化がみられている(表8)が、これは、対象魚種の資源変動に起因した漁場利用の変化の結果であると思われる。例えば、過去に多獲されながら近年殆ど水揚げがないキチジ、メヌケ類は、乱獲のため資源が減少し、当県の底びき網は採算がとれないため狙って操業していない結果である。

 1970年頃までは、沖底は沖合性の資源(キチジ、メヌケ類、サメ類、タラ類、イカ・タコ類)を対象に操業し、小底は沿岸性の資源(ヒラメ・カレイ類)を対象に操業して、競合することはなかった。1972年頃から、小底は漁場を沖合に拡大して、沖合性のイカ・タコ類、タラ類を漁獲対象とするようになった3)(図4)。その背景には、

 ・1965年頃から、沿岸小型船の固定式さし網漁業が、ネットホーラー、ナイロンテグス網の普及等により発達し、ヒラメ・カレイ類を対象に、小底との間で資源・漁場の競合が激しくなった。その結果、当時主要漁獲対象であったイシガレイ、マコガレイの資源が1970年頃から急激に減少した(図3)こと。

 ・小底では、木船からFRP船への代船建造が進み、また、小型化高馬力エンジンが装備された1)こと。

などの要因があったものと推測する。

 その後、1980年代前半にかけては、小底は沿岸のマガレイ資源の好転により、それを主な漁獲対象とするが、沖底は沖合性資源のさらなる減少により、経営の悪化が進行したものと推測され、漁労体数が減少していった。マガレイ資源が減少し、小底は再び沖合性資源を対象とするため、船型とエンジン馬力の大型化を図って、沖底の許可を取得し沖底へ転換した。

 当県沖底の主力となった「小底から転換した沖底」は、「従来の沖底」が大型で沖合の資源のみを対象として操業し、主要資源の減少により漁業経営が悪化したのに対し、比較的船型を小型化してコストを押さえ、沿岸から沖合まで広い範囲の資源を対象に操業した。転換した当初の1985〜1990年は、沿岸の資源を対象とする比率が高かったと推測されるが、1990年頃から沖合性資源を対象とする度合いを強めているものと思われた(図4、図5)。

 一方、沖底に転換しなかった小底は、沿岸性のヒラメ・カレイ類を漁獲対象とした操業を継続し、沿岸小型船との資源・漁場の競合が強まっている(図4)。

 底びき網漁業の課題

 当県沖底・小底の実質水揚げ金額は、1979年をピークに減少傾向が継続している(図6)。

 底びき網漁業対象資源の動向をみると、減少した沖合資源(キチジ、メヌケ類)は回復が困難な状況にあり、現在漁獲対象としている主要魚種についても、水揚げ量の推移からみて、高水準時よりかなり低い資源水準であると推測される魚種が多い(図3)。また、卓越年級が加入した場合でも、漁獲努力が強いため若令、小型個体での漁獲が多く、さほど水揚げ金額の増加につながっていない状況である。このまま推移すると、漁業経営の悪化が強く危惧される。

 底魚資源減少の原因としては、乱獲だけでなく、幼稚魚期の生息漁場環境の悪化等の要因も考えられる。しかし、過剰な漁獲努力量により加入資源を小型魚のうちに漁獲する「成長乱獲」の状態が種々の魚種で指摘されており、現状を改善して底魚資源の持続的利用を図るためには、少なくとも、その状態を改善して長期的に資源回復を待つべきであると考える。

 沖底のみでなく、底魚資源を対象とする漁業全てについて、その漁獲努力量を見直し、現状


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